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真狩、
呼ぶな
真狩、
消えろ
「真狩くん、」
うるせえッ
ってな目付きで俺は事務のねえちゃんを見たんだろうな
「大丈夫?
さっきから何回も呼んでるけど」
彼氏が強面だったのか何だか分からねえが
事務のねえちゃんができた人格で良かった
「…悪い、」
「いいけど顔色悪いよ、焼豚みたい
いやあ、八幡巻きの、
んん、ローストビーフの焼けた上ンとこ、」
人選は鈴鹿らしく
奴の感性に、この瞬間だけは助けられた
「どしたの、悩み事?
課長にでも相談したら?」
残念だがそいつが元凶だ
「いや、何でも「恋愛相談ならのるわよ」
食い気味でねえちゃんが迫る
「…ちげぇよ」
「今の反応は無理でしょ
そうでしょ」
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そんな崇高なもんじゃねえ
それ以前の問題だ
「私で良かったら話くらい聞きますよッ」
「あのな、あんたの方が年下だろうが」
「社歴なら私の方が長いってば
はい決定、今夜飲み会」
「決めんな」
馬鹿みたいに耳の奥で反芻する奴の声がいつまでも消えない
声を思い出す度に胸が詰まり、むせた
どうすりゃ良かったってんだ
俺はただ眠ってただけだ
ちょっと寝惚けて
それで終わりだって言うのかよ
その通りだった
自分の間抜けさ加減で失ったものの大きさと
それが如何に自分の大半を占めていたのかを知った
会社の洗面台で冷た過ぎる水で顔を洗うと、血色と目付きの悪い顔が鏡に映っている
台に置いた錠剤の箱を引っ掴み、作業着のポケットに突っ込んだ
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