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翌日の外出先での整備作業は寝不足でブッ倒れんじゃねえかと思ったが
変なスイッチが入り俺にしちゃ意外とテンション高めで作業を終えた
キャリーバックを引き部署に戻る頃にはもう終業のチャイムが鳴っており、
事務のねえちゃんが相変わらず彼氏の愚痴をこぼしまくっている
「『言ってくれなきゃ分からない』ってんならさ
あんたはいつも私に『好きだ』ってちゃんと言ってんのかってんよ
ねえッ」
別に俺達の返事など要らないねえちゃんは吠えるだけ吠えると部屋を出て行った
「今夜も飲みに行くんだろうな、」
「行くだろ」
「お帰り」
「はいよ」
キャリーバックを机の横に起き、口頭で経過報告を済ませ外套を着たままパソコンを開いたそこへ
「俺は、お前が好きだよ」
上司からの出し抜けの告白に俺が固まる
「な、何言ってんだあんた」
「佐倉くんじゃないが、
ちゃんと言わないと分からないだろ」
立ち上がる鈴鹿を硬直したまま眼で追うしかできねえ
鈴鹿は俺の肩に手を置き上体が机に押し付けられる
二人の時のこいつの積極性は異様
封じるように手首を掴み、這い登ると手に手を重ねた
「困ったやつだな
人の告白に嫌だとか嬉しいとか、何かないのか」
「タイミングがおかしいだろうが、」
「夜景とかレストランが要るくちか」
「…高いワインもな」
また人を弄びやがって
唇が合わさったところで外線が鳴り、鈴鹿が手を伸ばす
ガッチリ押さえ込まれ動けない俺の上で応対する電話は、
…実に嫌な感じだ
「そうですか、分かりました
ちょうど技術者がおりますので今から向かわせます」
営業スマイル全開の鈴鹿だが電話の相手には見えず、俺が見とれてるだけ
「と言う訳で、」
「俺は今、戻って来たばっかじゃねえかッ」
「そう言わず、」
俺の視線が下がる
密着した腰を鈴鹿が更に押し付けたのだ
突き上げる風に
「楽しみは後にとっておくもんだろう、」
な?、と耳元で囁かれ
熱を下げる為にも俺は鈴鹿の顎を押し上げた
「行きゃいいんだろッ
このブラック上司ッ」
「いつも悪いな、」
この後、鈴鹿は定例の幹部会議に出席する
行くなら俺しかない
そんなことは分かっているが頼み方が姑息なのと
はまった自分に腹が立つ
またキャリーバックを引っ提げて出て行く所を呼び止められ
投げられた塊を反射的に掴んだ、それは鍵
「これ、」
「うちの鍵だ」
合鍵を渡す理由はそう多くない
鈴鹿の体温で暖まった小さな鍵を握り締める
「…キーホルダーがダセえ」
「部長の趣味にケチをつけるな」
「要らねえ土産を押し付けてんだろ」
俺の方が遅くなるからと背中越しに手を振る鈴鹿に
俺も言わなければならないことがあると自覚した
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