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「ほら、たべろ」
あれから、一緒に先生のお家に帰ってきて。
今は、晩ごはんの時間。
目の前に広げられた豪華なお皿の数々に、思わず目を瞬かせる。
………すごい。
どの料理も出来たてで、湯気を立てている。
……出来たてのご飯なんて、いつぶりだろ。
給食以来かな。
…あれをできたてというのかは微妙だけど。
『いただきます』
やっぱり声にはならないそれに、けれど、先生の目は優しげに細められる。
「好きなだけ、食え」
そう言って、自分も食べ始めた。
ぼくは、あまり食べる方ではい。
それに、今日はお昼ご飯を食べたというのもあって、正直あまりお腹は減っていない。
それでも。
先生が作ってくれた料理だと思うと。
先生が食べているものなのだと思うと。
自然と、"食べたい"と、そう思った。
ぱくり、ひと口食べて。
へにょ、口角が勝手に緩んでしまう。
「はは、うれしそーだな、よかった」
その声にハッと我に帰る。
恥ずかしい……!
先生といると、気付くと表情がゆるんでいる。
…でも。
ちらり。先生を見上げる。
「ん?」
優しく、あまく、笑うその顔を見て。
ーーーーそれでもいいかな、って、そう思えた。
そのままもぐもぐと食べ進める、けれど。
「………」
ほんの数口で、お腹がいっぱいになってしまう。
みんながどのくらい食べるのか、よく知らない僕でも、これが少なすぎるってことくらいは、わかる。
せっかく作ってくれた先生に、もうしわけなくて。
ぱくり、
どうにか食べ進めようとするけれど。
………お腹がいっぱいで、くるしい。
「綺羅、腹一杯なのか?」
その声に、ビクリ、肩が震えた。
どうにか、ふるふると首を振る。
まだ、食べれる。食べたい。
けれど。
「……無理すんな」
先生は、そういうとひょいっと僕からお箸をとってしまう。
全然減っていない料理が、申し訳なくて。
こんなことばっかりだな、って悲しくなった。
「気にしなくていいから。でも、お前、ほんとに軽すぎだから、ちょっとずつ食べれるようにしてくぞ」
そう言って、先生はクシャリと僕の頭をかき混ぜる。
でも、せっかくつくってくれたのに。
じわり、視界が滲む。
……じぶんが、なさけなくて。
けれど。
「本当に、気にしなくていいから。可愛い笑顔が見れたからじゅーぶん」
そう言って、僕の頭をもう一度かき混ぜてから。
先生の笑顔が甘みをますから。
そのセリフに、表情に、ぼっ、と顔が熱くなるのがわかる。
……は、はずかしい……!
嬉しさと、はずかしさが、頭の中でぐちゃぐちゃになって、別の意味で泣きそうになる。
そんな僕を、先生は不思議そうに見ていた。
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