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問題を見れば、反射で手が動く。
独立な事象の確率なら、足せばいいし、そうでないなら、かければいい。
データはと言われれば、定義にそってとけば、自然とこたえがでるわけで。
数学は、かんがえないととけないけれど、あまり、かんがえなくて、いい。
カリカリと問題を解いて、正解を見て。
それを繰り返していれば、ふと目元があたたかいものに、おおわれた。
衝撃で、手からシャーペンがこぼれてしまう。
「はい、一旦終わり」
びっくりして目をパチパチさせれば、目を覆うなにかに、まつげがあたる。
くすぐってぇよと笑われて、頭を撫でられた。
そのまま、体を後ろに引かれて、目元から手が離れる。
ぼくを見下ろす、あおと、視線がからまった。
その優しげにきらめくあおをみていると、体からほっと力が抜けて。
気がつけば、後ろに立つ先生に、もたれかかっていた。
「勉強すんのはえらいけど、お前はちょっとやりすぎ」
そう言われて時計を見れば、思っていたよりも時間がたっていた。
そのまま、先生の手が、そっとぼくの肩に置かれて。
「すげぇ肩凝ってるし」
そのまま、ゆるりとほぐすように、肩を撫でられて、ピクリとからだが、震える。
「こら、力入れんな。マッサージするだけだから」
そういうと、その言葉通り、肩や首のあたりを、絶妙な力加減で押し込まれる。
服越しに伝わる、先生の体温と相まって、すごく、きもちいい。
その手は、止まることなく、腰のところまで降りてきて。
きゅ、と押されるたびに、ただでさえ抜けている力が、ますます抜けていく。
「……よし、こんくらいか。」
先生がそう言っててを止める頃には、完全にふにゃふにゃで、完全に、先生に体重を預けていた。
…………きもち、よかった。
いまだに余韻でぼんやりしていると、ほっぺたを優しくつままれた。
「……あんまり同じ姿勢でいると、頭痛くなんぞ」
そういうと、先生は僕を抱き上げて、ベッドの上まで運んでいった。
「…………!」
衝撃でハッと我に帰った時には、向かい合わせで先生の膝のうえにのせられていて。
「まえから勉強はしてたけどさ。最近、ずーっと、勉強してるよな。
学校でも、残って黒崎達とやってんだろ?」
コクリ、とひとつうなずく。
先生は少しだけ考えるように目を伏せてから。
「……そんな勉強しなくても、お前テスト余裕なんじゃねぇの?
それとも、そんなに"ごほうび"楽しみにしててくれた?」
そう言って、目を細める。
ごほうび。
その言葉に、ぼっと顔が赤くなるのが、わかる。
けれど。
こころのなかにずっとあるもやは、やっぱり、晴れなくて。
「…………やっぱ、綺羅、なんか悩んでるだろ」
そして先生は、それを見透かすようにそう言って、柔らかくわらった。
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