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織田作×乱歩(全年齢) *捏造&ネタバレ注意
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「隣、いいか?」
「どうぞ〜」
その短い会話が始まりだった。
馴染みの洋食屋のカウンター席。
私は何時も、此処に来ると 店主が目の前に来る一つの席に座り、咖哩飯を食べる。
今日は、その席に先客が居た。
なので、仕方なく隣に座ることにした。
昼を少し過ぎたこの時間に客が居るのは珍しい。
等と思うのは少し失礼だろうか。
しかし、私は少しばかりがっかりしていた。
今日は、長い出張から帰っての訪問だった為、この出張中にあった出来事を店主に話そうと思い、わざと人が退いてくるこの時間に店に来たのだ。
そうだとしても、この空いているカウンター席でわざわざ人が座って居る隣を選んだのは些か無遠慮だったか。
そう思ったのは席に座った後だった。
座ってしまっては、此れから又 席を移動するのもなかなか可笑しな行動に思える気がしたので、私はそのままの席で 店主に「咖哩飯を呉れ。」と告げた。
「ねぇ、おじさん」
不意に、隣から声が聞こえた。
一応、警戒をして 目だけを其方へ向けると、其処には思ったよりも見た目の若い…少年が居た。
自分を呼んだのが大人だったなら警戒は解かなかったかもしれない。
私は、隣に座って居るのが少年だと認識すると、顔も少年の方へ向けた。
「なんだ?」
私が顔を向けると、少年は私の顔にグイッと顔を近付けた。
「…どうした?」
再び問いを投げかけると、少年は「いやぁ…」と口を開いた。
「何処かで会った事が有るような気がしたんだけど……ううん……思い出せない………」
何処かで……?
自分の顔立ちは人の記憶に引っ掛かる程特殊なものではないが、真剣に考え始める少年を見ていると、私も記憶を引っ張り出さなければならない様な気がして、私は微かに鼻に届く咖哩のスパイスを香りを感じながら記憶を辿っていった。
あどけない表情、つり目、無造作に切られた髪の毛………。
瞬間、私の頭の中に電流が流れた。
否、頭の中に電流が流れる様な錯覚をした。
思い出したのだ。
忘れもしない、初めてではないかというくらい任務を不成功させたあの日の事を……。
あの日は、とても風が強かった。
外を歩くと髪が乱れ、襟衣(シャツ)が風に乗って暴れ靡いた。
そんな風の強い日、私は組織から一つの任務を仰せつかった。
仰せつかった任務は…簡潔に言うと、殺し屋の<フリ>をすることだった。
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