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(続)
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中也は、暫く何も言わずに乱歩の後へ続いて歩いていた。
が、乱歩が迷い無くどんどん道を進むにつれ、中也の不安は膨らんでいく。
そして、<其処>に限りなく近くなった時、中也は口を開いた。
「なァ…真逆とは思うが…手前が今向かってる場所っつうのは…………」
恐る恐る、と言う様に 中也が乱歩に問いかけると、乱歩は中也へ向かずに歩き乍ら言い放った。
「やあぁっと気づいた?
そうだよ。今僕が向かっている場所は……」
乱歩の足が止まる。
目の前には中也にとっては見慣れた真新しいアパートがあった。
「…………………。」
中也は物を言えなかった。
否、完全に思考がフリーズしている。
「なんで…手前…俺の家…」
二人が辿り着いた場所は、偽りなく中也の住んでいるアパートだったのだ。
「さぁて!じゃあ行きますか!」
「ちょ、待て待て待て!」
乱歩が元気に言ってアパートの階段を登り始めた時、中也の固まった思考が高速で回り始め、緊急危険信号を発した。
そして、乱歩を追い掛け 階段を登る。
が、中也には一つ、安心出来る材料があった。
「って、あれ…………?」
そう。中也の部屋の鍵はオートロックなのだ。
(流石のコイツでもオートロックの番号迄は……)
カチッ………
アパートの静かな廊下に小さく鳴り響いた音。そして乱歩の「開いた。」という当たり前の様な一言。
それは、中也が目眩を起こすには十分過ぎる出来事だった。
「お邪魔しまーす」
行儀良く、部屋主に断りもなく部屋へ入っていく乱歩。
中也は、ガッと乱歩の腕を掴む。
「え?何?」
訳が分からないと言う様に眉間に皺を寄せ、中也を見る乱歩。
「いや、 え?何? …じゃねぇよ…。
何普通に入ろうとしてんだよ!!!」
中也が怒鳴ると、乱歩は中也の耳元へ口を寄せた。
「よ~く考えた方が良いよ?今 僕の頭の中には、君の家の場所はもちろん、オートロックの番号までしっかり記憶されてる。」
其処まで言うと 乱歩は「もう言いたい事は分かるよね?分かったら手ぇ離して。」とだけ言い、すっかり力の抜けてしまった中也の腕から逃れた。
「手前………、あの青鯖にそっくりだ……」
そう言い、中也は乱歩の後へ続いて家の中へ入った。
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