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織田作×太宰(r18)
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カランカラン…
何時もの酒場へ入ると、そこには当たり前の様に太宰が居た。
だが、今まで当たり前の様に思っていたもう一人の<<友達>>は何処にも見当たらなかった。
「やぁ、織田作。
来ると思っていたよ。」
太宰は、酒のグラスを掲げ「先に始めてるよ」と言い、酔って少し赤みを帯びた顔を綻ばせた。
俺は無言で太宰の隣へ行き、マスターに「アブサンを呉れ」と言って椅子に腰を落とした。
「……織田作がアブサン…珍しいね。
強い酒は記憶が飛ぶから好まないって前に言っていたのに。」
太宰が何時も食べている物とは違う、少し値の張る蟹缶をつつき乍ら言う。
「そういう気分なんだ…。
何故か無性にそういう酒が飲みたくなった」
私が言うと、太宰は「ふぅん…」とだけ言って酒を飲んだ。
私は知っていた。
太宰がいつもとは違う蟹缶を酒の肴にしている時は、太宰の身に何かしらが起こった時だ。
それが、太宰にとって良いことなのか、或いは悪いことなのかは問わない限り分からないのだが。
何時もなら、太宰がそれ以上語らない事柄に関して、深く追求はしない。
しかし、其の日は、どうもこのまま話題を変える気にはなれなかった。
「……何か、あったのか?」
…言葉が足りなかったのだろうか。
私が問うと、太宰は暫くの間、言葉を発さなかった。
が、唐突に口を開き、
「…今日、捕まえた捕虜の拷問を任されてね。様々な手を試したのだけれど、ふと目を離した隙に自殺されてしまってね…口を割らす前に。」
私は黙って聞いていた。
「あの捕虜から情報が聞き出せれば今回起こっている抗争も早々に幕を閉じる事が出来ると思っていたのだけれど……
色んな面から悪態を突かれるし…あーあ…もう最悪……」
暫く黙って聞いていたが、10分程経った頃だろうか、俺は太宰を呼んだ。
「太宰。」
太宰がゆっくりこちらを向く。
私は、太宰と視線が交わったのを確認すると、目をしっかりと見て、問うた。
「本当は、何があった?」
太宰は一瞬、泣きそうな、驚いた様な、…どうにも表し難い表情を見せたが、すぐに何時もの顔になり、私から顔を逸らして 言った。
「…場所を変えよう。
マスター、お金置いておくね。」
私も、太宰へ続いて財布から金を出しカウンターへおき、そのまま太宰の儚げな背中を追い店を後にした。
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