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(続)
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どれだけ歩いただろうか。
段々足が重くなっていく。
私は、何も言わぬまま、太宰の後ろに付いて黙々と、ただ黙々と歩き続けた。
ーふと、顔を上げる。
薄暗かった路地を抜け、住宅街を抜け、今は色とりどりの明かりが道を照らすネオン街。
マフィアが管理している店が多くある場所だ。
私も何度か仕事で面倒事を片付けに訪れた事があった。
太宰がスッと小さな路地へ入った。
私も、続けて入る。
次の瞬間 俺は、太宰に壁に押し付けられていた。
巷で云う所の壁ドンというやつだ。
その時、太宰が口を開いて………
気づくと私は、見覚えのある明るいネオン街を歩いていた。
先程のは、異能力が見せた数秒後の未来だったのだ。
太宰が、小さな路地へ入る。先程みたものと同じ路地だ。
私は、迷わず太宰の後について路地へ入った。
背中に軽い衝撃。
後頭部を固い壁に打ちつけ、少し目の前が白くなった。
「………ねぇ、織田作。
君なら分かっていただろう?私が…こうすると……
………何故、回避しなかったの?」
太宰が顔を上げぬまま、問うた。
「何故、か…」
少し考える。
が、理由は1つだった。
「お前が、俺に何かを言いかけた。
それが聞けなかったから、それを聞こうと思った。」
「そうか。…多分、織田作が異能でみた私も、こう言おうとしたんだろう。」
その時、強い風が吹き、太宰の髪が巻き上げられ、表情が見えた。
「……私を、抱いて。」
太宰は、静かに泣いていた。
今にも消えてなくなりそうなその声は 小さな路地に、小さく木霊した。
太宰は、私と顔を合わせようとしない。
しかし、一瞬見えた太宰の泣き顔が頭の中から離れず 私は、太宰の顎を軽く持ち上げ、無理矢理 太宰と目を合わせた。
やはり、太宰は泣いていた。
「何故…泣いているんだ?」
私が問うと、太宰は目だけを俺から逸らし言った。
「…………目に、カナブンが入っただけだよ。」
なんだって、カナブン?
「大丈夫なのか?」
俺が言うと、太宰は何故か ふっ と笑い、私の服に体を埋めてきた。
「織田作…私に、何も言わず、付いてきてくれる?」
泣きそうな声で太宰が言うので、私は特に深く考えずに
「あぁ。」
と、言い、フラフラと歩く太宰の後ろへ続いた。
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