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(続)
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私は、返答に困った。
ここで肯定してしまったら、果たして 私達は元の関係に戻ることが出来るのだろうか。
部屋にまたしても長い沈黙が流れる。
一生続くのではないかと疑いたくなる程、その沈黙は続いた。
しかし、その沈黙は、永遠のものではなかった。
「織田作。
聞いてくれるかい?
今日、君に会いたかった理由を…。」
太宰が、ゆっくり、話し始めた。
「今日、首領にある組織から捕らえた捕虜の拷問を任されたって話はもうしたよね?」
私は、黙って頷く。
「何時もの文句で、教えてくれれば解放してもいいって言ったら、捕虜は自分の属して居る組織のあらゆる事を事細かに話してくれてね。十分な情報が集まったから、何時もの様に殺そうとしたのだけれど……………」
太宰は 目を瞑り、静かに言った。
「その捕虜の指には、婚約指輪があった。」
太宰は、無理矢理喉から押し出すように声を出し、尚も苦しげな声で続けた。
「何時もなら気にしなかったと思う。
仕事だと割り切って直ぐにその捕虜を殺していただろうね。でも…考えてしまったんだ……今、此処でこの捕虜を殺したら……この捕虜の帰りを待っている人はどう思うだろう……悲しむだろうなって………」
「逃がしたのか?」
俺が言うと、太宰は口を固く結んで軽く頷いた。
俺は、驚きを隠すことが出来なかった。
何処かで 太宰には、もう憐れみや同情といった感情は消えてしまっているのだと思っていた。
「当然、直ぐに首領にバレたよ…。
隠す気も無かったんだけれど……。」
ポートマフィアでは、捕虜を首領の許可無しに逃がすと、脱獄補助として厳しく処罰を受ける。
「処罰は……………」
問うと、太宰は感情を無くした声で
「首領の………相手だった。」
とだけ言った。
太宰は、それ以上言葉を続けなかった。
俺も、そこで全てを理解した。
理解した時、勝手に体が動いた。
「………織田…作……?」
気が付いたら、俺は太宰を抱きしめていた。
頭を撫でていた。
子供でもあやすみたいに、ずっと、ずっと抱きしめていた。
暫く経っただろうか。
少し体を離すと、俺の唇に太宰の唇が重なった。
何度も、何度も確度を変えて重ね合わせる。
互いの存在を確かめ合うように……。
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