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目が覚めると、隣には最愛の恋人…によく似た子供がいた。
「ハル…?」
顔は確かにハルだ。けれどいつもとはサイズ感が明らかに違う。俺と同じくらいか、下手したら俺より少し小さいくらいだろうか。
「ん…んん…」
その少年は寝返りを打つ。背が高いけれど、顔には幼さが残っているから少年という風に捉えた。まさかとは思うが、ハルがそのまま小さくなってしまったのだろうか。
まつ毛が長くて人形みたいだ。寝顔は不機嫌そうでうなされているようにも見える。
恐る恐る肩を揺すってみると、少年は目を擦りながら起き上がった。
「…Waht's happened?Time soon to go to school?」
いきなり紡がれたその流暢な英語に、なんと反応すれば良いのか分からず戸惑ってしまう。
「あ…え、えっと…その…英語じゃねぇとだめなのか…これ」
「…にほんじん?」
「え…あ、そ、そう、日本人だ」
「ここ、どこ。にほん?…だれ、おまえ」
声は自分の知っているハルと同じだ。もう声変わりもしているらしい。どこかつまらなそうで目に光がないが、やはり整っているのに変わりはなかった。
もしも本当にハルが小さくなってしまったのだとしたら、何歳なのだろうか。見たところ中学生くらいに見えるのだが、荒れくれた雰囲気はない。
「ここは日本で…俺と、ハル…遥人の家。俺は双木勇也って言って…」
「ふーん…なんでお兄さんとボクがいっしょに住んでるの」
「えっと…友達、だから?」
〝お兄さん〟という響きが可愛らしくてつい動揺してしまう。いきなり恋人だなんて言って混乱させたら可哀想だし、友達と説明するのが賢明だろう。
「友達なんていないし、お兄さんと友達になってないし、ボク」
「だからな…お前は今高校生のはずだったんだけど、それが目が覚めたら小さくなってて」
「Unrealistic…」
「アン…なんて?」
「realじゃないってこと」
リアル…現実的じゃない、非現実的だと言いたいのか。先程からやけに英語を話すし、日本語がまだ覚束無い様子だ。ということはアメリカに住んでいた頃のハルということになる。
「信じられないかもしれねぇ、けど本当なんだ…そうじゃなきゃお前がアメリカからいきなり日本に来れるわけがないだろ?」
「まあ…そうだね。信じてあげるよ」
「妙に上からだな…お前、今いくつだ?」
「5フィート5インチくらい」
その回答に思わず首を捻る。一瞬考えてから、ハルは歳のことでなく自身の身長を答えたのだと気づいた。
「えっと…身長じゃなくて、年齢はいくつだ?ごめんな、分かりづらくて」
「……eleven」
ハルは自分の間違いに気づいたのか顔を赤くして怒ったようにそう答える。それがなんとも可愛らしい。
11歳ということは日本だと小学五年生頃だろうか、ハルがギリギリまだアメリカにいた頃だ。
「5フィート5インチって…日本式だと何センチになるんだ…」
「待って、計算する…165センチ」
「計算早ぇ、つーか小五で165って大きいな」
「べ、別に普通…計算も、身長も…母様はこんなの何もすごくないって、きっと言う」
照れたような様子から、すぐに浮かない顔になる。この年頃で母親から愛を受けられないのは、とても辛い。よく知っている。
こんな子供に暗い顔をさせてしまったのが酷く胸を締めつけた。
「そんなことねえよ、お前は凄い。よくできた子だ、俺はよく知ってる」
「お兄さん…ボクの、なに知ってるの…へんだよ」
「言っただろ、友達なんだ。一緒に住むくらい仲がいい」
間違ったことは言っていない。友達と聞いて、ハルはまた恥ずかしそうに顔を赤らめる。
この11歳のハルには友達があまりいないようだった。この歳では猫をかぶるという術をまだ身につけていないからかもしれない。
わざわざ猫を被らなければならないというのも、少し悲しい話ではあるが。
「…友達って同じベッドで寝るの」
「……日本ではそうなんだよ」
「Bedmate…?お兄さんゲイなの」
「ち、違う」
「だよね。ボク、女のコの方がマシだもん」
さり気なく言われたその一言に少々傷つく。そりゃあそうだ。ハルは元々ノーマルで、現在も一応そうなのだから。
どうにかこの話題を変えなければ。
「そういえば…ハルは…いや、遥人の方がいいのか」
「いつもそうやって呼んでるならハルでいいんじゃない、遥人って名前、好きじゃないし」
「…ハルは、家でも英語喋るのか?」
「うん、家のメイドさんが英語喋るから」
アメリカの家にも家政婦がいたのか。それにしたって家で日本語を喋る機会はあまりないのだろうか。そういう教育方針なのかもしれない。
「家族とも英語で?」
「…母様は兄さんとしか話さない。父様はずっと仕事。兄さんとは…ちょっとだけ話す」
「ごめん…ごめんな…ハル」
咄嗟にハルの体を抱き締めてそう零した。自分のことではないのに、ハルに辛いことを言わせてしまったのが心苦しくて涙が滲む。
この子はまだ愛されることを知らない。大人なんて信用してないんだ。
「何がごめんなの、へんだよやっぱり。普通のことでしょ」
「悲しいこと、言うなよ…お前はちゃんと愛されるから、大丈夫だから」
「誰も愛してくれないよ…ていうか、苦しいからはなして」
「…今の17のお前には恋人がいて、その恋人はお前のことを心から愛してる。まだ直接は言えてない。けど…本当にお前が愛しくて、大切なんだ」
泣きながら何を口走っているんだと自分でも呆れるが、言わずにはいられなかった。ハルに分かって欲しかったのだ、この先ちゃんと愛してくれる人がいることを。
「…それって、もしかして勇也お兄さんのこと?」
___________________
続きます
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