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叫んでみた(1)
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会社帰りに鎌やんから会おうってライン来た
どーせモリクミと松永もおるやろうと思ったら鎌やんだけしかおらん
スーツの鎌やんは久しぶりに見たんやけど黙っとれば普通やしモテ顔やがしゃべると残念やし性格がクソでサイコやからなぁ......
それでも騙されて鎌やんのこと好きになる女はおるみたいやし世の中分からんな
「おぅ?俺が1番乗りな感じ?」
「長野君しか呼んでないよー」
「へ?俺だけしか来んの?」
「そうだよー」
こういう時ってほとんどいい話やなかったイメージしかねーなと俺は身構えた
鎌やんは俺の気持ちを知ってか知らずかアホ面でクリームソーダのアイスをスプーンですくって口に入れるっつー男お1人様では「なにげに度胸いるだろうそれは」っつー食事をしよった
スーツ着たそこそこイケメンがクリームソーダのアイスをスプーンですくって口に入れとる姿なんかお目にかからんやろ
「なん?俺だけっつーことは松永のこと?」
「そうだねー」
ですよねー
「なんかあった?」
「まだ何もないー。でもこれから何かあるかもしれないー」
「どういうこと?こーいう話ん時はモリクミおるイメージやから鎌やんと2人って珍しいな」
「モリクミいるとややこしくなるからねー」
「いつもややこしいからなあいつは。って鎌やんも人のこと言えんぞ」
「そうだねー。んじゃ本題に入ろうかー。最近の松永君はどうだー」
「どうだーってあんま変わらんよ」
「そうだねー変わんないねー」
「おい」
なんで俺を呼んだんだ
「松永君は変わらないよねー昔からずーっと。だから心配したんだー。彼はまた僕たちの前から消えるんじゃないかなーって」
「ぬぁあああああにぃいいいい⁉︎」
「声でかいよー。座って座ってー」
俺はいきなりの話に立ち上がって大声出したみたいで店内の客の目線くらいまくってた
「どういうことって?俺近くにおるけどそんなそぶりもねーしいつもと変わらんよ‼︎なんかあったっんか⁉︎」
座り直しながら鎌やんにたずねた
「松永君同行援護の講習を受けたみたいだー」
「同行援護?なんそれ?」
「視覚障がいの人を介護する時に必要?なものらしいー。僕もよく調べてないから分からないんだけどー」
「なんでそんな講習受けてるん?てかなんで俺が知らんで鎌やんが知っとるの?」
「モリクミが松永君をストーキングしてる時にたまたま知ったんだよー」
おい‼︎
「モリクミはその事を松永君は相変わらず勉強熱心ねー介護の分野までお勉強してるなんてーとしか思ってないみたいだけど僕はそう思わないなー」
「てか松永なんで俺に隠してそんな講習受け取るん?俺知らんぞ」
「んー。いつか来るXデーのためかなー?」
「Xデー?」
「松永君の目が見えなくなる日」
「そんな日は来んよ」
「長野君落ち着くんだー。僕もそうであってほしいけどー。長野君も松永君の目の病気のこと知ってるだろー?網膜色素変性症のことー」
今までは身バレ気にして病名までは書いとらんかったから初めて書くことになるな
今は書いてもいいかなって思った
バレてもいい。バレても恥ずかしくない生き方を俺たちはして来たと思う
子供産んだら失明するとか遺伝で受け継がれとるとか嘘やろ?っていうやつらも読んでておるやろうなって俺も松永も思うとったんよ
信じられんやろーってな
そーいうコメントもあった気がするしな
嘘じゃねーよって言っても嘘っぽいしな
でも本当なんだ
松永の母ちゃんの家は網膜色素変性症の遺伝がずっと続いとるらしい
この病気は原因が究明されとらん病気で治療法もない隔世遺伝で受け継がれるっつーもんらしい
普通なら40代くらいから目が見えんくなって来て60代で完全に失明するらしいんやけどね
松永のばあちゃんと母ちゃんは子供産んだら失明した
2人とも子供ん時から徐々に視力が低下しよったけど失明まではしとらんかったらしいんよね
やけん松永のところは40代っつーより早くに視力の低下が始まっていきなり失明するっつー珍しいパターンらしい
「いつか来るXデーの為に長野君が松永君にどんな介護をしなきゃいけなくなるのか自分で確かめに行ってたんじゃないかと思うんだー。自分の為じゃない。長野君を思ってだよー」
「目が見えんくなったとしても変わらんよ。ずっと一緒におるよ」
「それを松永君が......もしもだよー?長野君の負担になるのを嫌がる松永君は前みたいに僕たちの前から消える日が来るんじゃないかなーって心配なんだよねー。松永君はどうしてそんな講習を受けたんだろー?何か体に異変が起きてるんじゃないかなー?介護のことも熱心に勉強し始めてるしー。それっていつか長野君がしなきゃいけなくなるかもしれないことを前もって知るためなんじゃないかなー?長野君にどんな負担をさせることになるのかー」
なんちゅー不器用な生き物なんだ
そんな先のこと心配せんでいいって腐るほど言うとるのに
「鎌やんは前みたいに松永が俺たちの前から消える日が来ると?」
「それがいつかは分からないけどー。でもXデーが近づいてるのを感じたら目が見える内に少しでも遠くに離れて関わらないように生きなきゃって松永君は思うだろーなー。松永君は人間嫌いなクセに自己犠牲の塊だからー」
「あぁ.....」
「こんな話でごめんよー。そうなった時止められるのは長野君しかいないんだよー。だから知ってて欲しかったんだー僕もモリクミも松永君がいなくなるのは嫌だからねー」
ため息しか出らん
「あんがと鎌やん」
「ほいー」
家帰って松永と話さないかんなってとぼとぼ家までの道歩いた
ぜーったい離れるのは嫌なんだよぉおいい‼︎
前は俺のせいで松永が俺たちの前から消えたけどあん時は大学の交換留学で須田教授やらの助けもあって再会が出来たんやけど今度は見つけるのは無理な気がした
学生ん時よりも賢くなっちまって自由に出来る金も持った松永を探し出すのは無理になるやろう
完璧犯罪並に俺たちの前から消えて捕まえられんことやる気がする
「どんだけ俺にはお前が必要つったらいいんだよ‼︎まーつーなーガァあああああ‼︎」
人がおらん夜道やったけんバリクソでかい声で叫んだった
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