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叫んでみた(2)
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鎌やんと会ってすぐ家に帰ったら意外な人間がリビングにおった
「久しぶり」
「お富さん⁉︎」
お富さんが1人リビングでワイン飲みよる
松永の姿がない
いつお富さんが帰国したのかも気になったっちゃけど松永がおらんことの方がそん時は気になっとった
松永が消えた時の記憶がよみがえったっつーか
松永がおらんけん不安な気持ちにそん時なったんやね
あん時はお富さんがおって俺に長いこと話しかけて事情説明してくれたなって
外国におるはずのお富さんが俺たちの家にいるっていう状況も非常事態に思えた
「松永君はモリクミとここからずーっと遠くのセブンまで買い物に行ってもらってる。モリクミが一緒だから松永君にまとわりついてそう簡単には買い物させてもらえないでしょ。30分は帰って来ないよね」
「へ?」
「鎌田から松永君のこと言われたでしょ」
ワインぐびぐび飲んだくれながらお富さんが俺見ながらしゃべった
「鎌田は天才だけどバカだから」
「へ?」
「松永君のこと言われたっしょ」
「おぉう?なんで?なんで知ってるん?」
「ったくあのバカは。ほら長野君スーツ脱いで一緒にワイン飲むよ。座って。飲みながら話すわ」
お富さんに言われて向かい側に座ってワイングラス持たされた
「松永君のことになると鎌田も見当違いなこと考えちゃうから。鎌田に言われたんでしょ?松永君がいなくなるかもって」
「なん?知ってたん?」
「鎌田なら松永君の現状知ったらそうするだろうなーってね。長野君けしかけて松永君を離れて行かないように食い止めさせようとするだろうってね。そこがもう間違いなのよ。鎌田は読み間違えてる」
「ああ⁉︎」
俺事情分からず話についていけん
俺だけ知らんかったのか⁉︎いや鎌やんの話だとモリクミもか
「私鎌田よりも先に知ってた。松永君の視力が落ちてるってこと」
「ぬぁあああにぃいいいい⁉︎」
鎌やんはそうなんじゃないかなーって感じで話しよったけどお富さんは松永の視力が落ちとるってそん時断言した
「落ち着くのよ長野君。1番焦っているのは長野君じゃない。松永君よ」
「松永は......」
「落ち着きなさいって。最悪の結末にはなってない。鎌田に言われたんでしょ?松永君が長野君の前から消えるんじゃないかって。それはない。絶対ないわ」
お富さんは断言しまくっとったけどそん時の俺は動揺しまくっとった
「鎌田がそれに気付いたっぽいっつーのは鎌田から来たメールで私分かっちゃったのよね」
鎌やんからそれとなくお富さんに報告があったらしい
お富さんから松永君のこと頼むわよ‼︎って鎌やんとモリクミ言われとったからかもな
松永緊急入院の時はモリクミと鎌やんがお富さんから「役立たず‼︎あんたたちは何してんの⁉︎」ってボロクソ言われよったしな
「鎌田ならすぐ実行するよねーと思って緊急帰国よ。鎌田にカマかけてってシャレじゃないわよ?今日長野君に会うって聞いたから鎌田が動く気ね‼︎で私はここにいるわけ。モリクミ連れて来て松永君を外に出した。長野君帰って来たらまーつーなーがーっ‼︎で松永君と長野君でもめて私の話も出来やしない状況になるだろーしね。はーもうあのバカたれは‼︎」
「俺まだよく話が分からんッ‼︎」
「鎌田はね松永君好きなわけ。だから手の届く範囲で松永君の何もかも知っときたいの。それを揺さぶる不安要素がありそーって判断したから長野君をけしかけたんでしょ。長野君は松永君と一緒に住んでるし恋人だし松永君を止められる存在だから。でもねー違うのよ。鎌田が考えたことはぜーったい起きない。ぜーったい起きないのにあの天才バカたれは‼︎勝手に突っ走る‼︎」
「やけど前は.....」
俺たちの前から消えた理由
俺の浮気以外にもあの時はあった
目のことを知られたくなかった
誰にも特に俺に迷惑な存在になりたくなかったって
「長野君聞いて。松永君の健康診断の結果は津島先輩と緒方先輩に報告されていたわけ。それが私にも回って来てた。だから鎌田より先に知ってた。本人以外に知ってたのは私と先輩2人。今年の健康診断の結果で両目の急激な視力低下が松永君に起きてた」
松永の会社の健康診断は同じグループ会社の役員の津島のおっさんと緒方に報告されとった、ってか2人が気にしてたそうな
松永は周囲や俺には一言も言わんかったけど津島のおっさんと緒方にはバレバレでそこからお富さんに情報が回っとったらしい。この2人とお富さん前も繋がっとったしな
「松永君のことを長野君と同じように大事に思ってるあの人たちは松永君の行動をずっとチェックしてたんだよね」
「松永もそれに気づいとる感じはあったよ。監視されとる気がするって前の職場の時言いよった」
「そう。2人は園芸部の後輩でもある松永君が好きだから放っておけないんでしょ。松永君も誰かさんと一緒でむちゃするから。心配だったんだと思うわ」
「で.....松永の視力が急に落ちたってことは」
「うん。松永君のおばあさまとお母様が通った福岡にある眼科にそれからすぐ松永君が姿を見せたことを2人から聞いた。間違いなく松永君は病気の進行を理解してる」
「じゃあ.....」
「長野君。今君の頭の中で考えていることは絶対ない」
また俺らの前から消えるんか?
それよりも松永の目は大丈夫なのか?
「鎌田は昔みたいに松永君が迷惑かけないようにしなきゃいけない、みんなの前から消えるかもしれないと思ってるみたいだけどそれはない。絶対ない」
「どうしてそう言えるん?」
お富さんの自信の根拠が分からん
そんな俺の感情読んだのかお富さんがワイングラス持ち上げてグラス越しに俺見ながら言った
「だって私2人の結婚式を目にして誓いの言葉を聞いた唯一の人間だもの」
そう言ってお富さんが俺のワイングラスにワインぶつけた
「松永君は死ぬまでそばにいるっつーことにイエスって言ったのよ。英語だから長野君分かんなかったかもだけど」
ああそうやった
松永はあん時誓ったんか
「松永君は約束破らないよ。分かるよね?だから松永君は絶対何があっても長野君の前から消えたりしないの。松永君が何も言わず黙ってるんだからしばらくそっとしといてあげようよ」
「おぅ。でも目が.....」
「そうね。それでも見守るしかないじゃない。松永君が自分から言うまでは静かに見守ってあげない?コンタクトで1.0に矯正されてた視力がコンタクトつけても両目共0.4しかなかったそうだから本人も気付いてたと思う」
俺ため息
悲しくてな
「気付いてても信じたくなくて気づかないふりしてたのかもね。意識があっても無意識でも人は嘘つくから。視力がそこまで落ちてるなら気付いてたと思うけど健康診断まで何もしてなかったみたいだし。自分で自分に嘘ついちゃったのかな。松永君の病気は治療方法ないから分かったとしてもどうしようもないんだろうけど」
来なければいいなっつーことが来ちまったことに俺は心が折れそう
「医者はなんて?」
「そこまでは分からない。福岡の診察室の中の出来事は松永君しか分からない」
「俺.....」
「何もしようとしなくていいしどうにかしようとかしなくていいからね。とにかく静かに松永君を見守ってあげること。勘が鋭いんだからいつもの自然体で‼︎いい?それしか私たちに出来ることはない」
それしか出来んのか
無力やなぁ
「顔が暗い。松永君が隠そうとしてるんだからそれに付き合ってあげようよ。苦しいのは松永君なんだから。松永君から話すまで見守ってあげようよ。分かった?」
「おぅ.......」
「鎌田には私から余計な小細工するなって言う。モリクミは気付いてない。この話はここまでよ」
そう言ってワインボトル直で飲みだしたお富さんも悲しそうな顔に見えたけど俺と同じでそうやったんやろう
わざわざそげんこと言うためだけに帰国したお富さんも松永のことが好きなのは間違いない
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