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口は禍の元とはよく言ったもので、まさか去年のクリスマスイブにポロッと言った言葉が自分に返ってくるとは誰が知っていただろうか。
「ってな訳で、当然蒼斗も道連れな!」
友人の勝ち誇った顔が腹立つ。
「いや、朱斗が勝手に出るって言ったんだろ」
「でもお前俺に言ったじゃん!」
「何を?」
椅子に腰掛けたまま上半身をひねり横を向き、机に軽く腰掛けている朱斗を見上げれば顎をクイッと持ち上げられ、周囲で黄色い歓声が沸いた。
ただでさえ蒸してきた季節にこの熱は結構厳しい。
ついでにいえば絵面的にも厳しい。
しかしこの程度で止まるヤツではない。周囲の期待に応えるように俺の耳元に唇を寄せた。
「……俺がやるならお前も道連れだ、って」
……それは俺の物真似か?
少し掠れた声で俺の耳に囁く姿が彼らの興奮を煽り、遠慮のないシャッター音が立て続けに鳴る。
こうなると分かっていてやってるから性質わりぃよな。生温い吐息が耳にあたった俺としては、不快感そのままにコイツを突き飛ばせば良かった……。
大学生活も四年目を迎えれば、受ける授業も大分減り、それに合わせて大学から足が遠退く。するとほぼ毎日顔を合わせていた友人とも同じ講義以外では会わなくなった。それはこの騒がしい友人も例に漏れず。
そんな朱斗が持ってきた話題は、昔俺たちが専属で読者モデルをやっていた雑誌がクリスマス号にて一瞬復活するというものだ。
俺たちが高校生の時にスナップ誌の最前を走っていたその雑誌は現在休刊している。朱斗が言うには、昔の人気モデルを集めて同窓会みたいな企画をやりたいとのことで、当時のモデルたちに声を掛けているらしい。
スナップモデルから専属読モなんてものを作り出し、小遣い稼ぎ程度に活動していたが、今は全くやっていない。
ちゃんとスタジオで撮ったのは2年前のクリスマスイブだ。
俺はあの日、ああいう世界から完全に遠退いた自分を見た。波瑠のリードが無ければ動けず、しかも最終的には欲へと堕ちた。
去年はとても懐かしいと感じた自分がいた。その違いは分からない……訳でもない。多分、何もないそこにセットを作る仲間がいて、現場を作っていくという雰囲気があって、客観的に撮る側と撮られる側を見て、それを見ている俺の隣には朱斗がいて……それらが俺の知ってる現場に似ていたから。
それでも、もう撮られる側には回らないと断ろうとすれば、昨年自分が言った言葉に足元をすくわれた。
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