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Chantilly Flower* 05
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ちょっと反省しながら店頭のラッピング台に補充をしているとカラン、と来客を知らせる店のドアの小さな鐘が鳴った。
「いらっしゃいま……せ、ゲッ!」
そこに立っていたのは明らかに部活帰りの格好をした志摩だった。
たとえ心の中でも噂をするとなんとやらだ。
って昨日の今日じゃん!
「千花ちゃんどうかしたの?…あれ、君」
私の声に厨房から顔を出した綾人さん。
綾人さんを見るなり志摩は無表情のくせにオーラだけ花を飛ばして綾人さんにぺこりと頭を下げた。
そんな志摩に綾人さんは動揺するでもなく優しいいつもの笑顔を向けた。
「志摩くん、だっけ?いらっしゃいませ。今日も来てくれたんだね」
「昨日の今日ですよ?!しかも男子高校生!!」
「こら千花ちゃん。今はお客さまでしょう?」
綾人さんは全然怖くない風に笑いながら言ってこつんと小突いてきた。ああもう本当に美人だなこの人!
そしてその瞬間だけ私を睨むな志摩!
「はあいスミマセンー」
「あの、」
相変わらず何考えてるんだかわかんない表情に戻ったモノノフ、志摩は綾人さんに向かって身を乗り出した。
「モンブラン、美味しかったです」
「わあ、ありがとうございます」
「それで、あそこ」
言いながら志摩はそのごつい手で店内の隅のイートインスペースを指差した。
「今日は、食べて行っても良いですか?…モンブラン」
でかい体で相変わらず無表情で話す志摩にまたも綾人さんはふわりと微笑んで「もちろんです」と返した。
志摩は私がアウトオブ眼中って言うよりも綾人さんオンリーロックオンキープ!って感じだ。
無表情なくせに本当に好きなんだなぁって事がよくわかる。
「モンブラン、好きなの?」
「ケーキの中では、比較的。どこのよりも都築さんが作ったのが一番美味いです」
「ふふ、ありがとうございます。もうすぐ閉店だけど、それまではゆっくりしていってね」
綾人さんがケーキとコーヒーのセットをテーブルに置きながらお礼を言う。
そんなこんなで洋風ファンシーなお店に全く似合ってないモノノフ男子高校生が1人で座ってモンブランを食しながら真摯にこちらを見守る中、私たちは閉店まで働くことになった。
なんて斬新な。
そしてなんてオープンなストーカーなんだ志摩。
お近づきになりたいのはわかるけど千花ちゃんクラスメイトながらにちょっと呆れちゃうよ。
まあ、その席に座って綾人さんを眺めながらキャッキャするお客さんは志摩だけではないけれど!さすがに男子は志摩が初めてだよ!
当の本人は始終すばらしくご満悦顔だった。
それからと言うもの志摩は部活帰りから閉店までの短い時間にちょくちょくMa Priéreに寄り道しては
モンブランを食べて、綾人さんの仕事してる様子を眺めて、必ず最後に「今日のモンブラン美味しかったです」と本人に告げて帰るようになったのでした。
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