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Chantilly flower* 09
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景気よく、綾人さんを送り出したちょーぜつできる女の千花ちゃんは
いま
ちょーぜつ、焦っていた。
「千花ちゃん、あっちのベリータルトとプリンも一緒にお願いね」
「わたしはショート2つとモカケーキね」
「お姉ちゃんこれギフトで包装してくれるかい?」
「この店配達ってやってますかー?」
「今日店長さんいなくなーい?」
「は、はいぃ!ただ今ッ!!」
な、なんでこんな日に限ってこんな忙しいの!!!
あっちにこっちに店内を動き回ってもお客さんは減ることを知らないかのようにやってくる。
ケーキの数は綾人さんがいっぱい用意しておいてくれたから平気そうだけどこれを1人でさばくのはきつい!
綾人さんに電話をかける暇すらなくて。
右に左に動きっぱなしだ。
なんで綾人さんが出掛けた瞬間にこんな事になるのよー!!!
かるく涙目になっていた時だった。
また追い打ちをかけるかのように来店を知らせる扉の鐘がカラン、と鳴った。
「いいいいらっしゃいませー!」
「あれ。千花、なんで1人でやってんの?」
「!」
その声にハッと顔を上げるとそこにはとてもよく知った顔が…。
「きょ、京華ちゃあああん!!」
まさに女神降臨。
そこには小学生からの幼なじみで海南高校のお隣の女子高に通っている親友が立っていた。
私は思わず救いを求めるかのように京華ちゃんに手を伸ばした。
「ん、………あぁ。手伝う?」
志摩ほどではないけれどスラリとした長身に私服はいつもワイシャツとパンツでベリーショートの黒髪に切れ長の瞳を持つ京華ちゃんは、涙目の私の顔を見て全てを悟ってくれたらしい。
少しだけ把握の間を取ってから短い髪を揺らして首を傾げた。
私は迷うことなく何度も何度も頷いた。
「あ、あ、ありがとっ」
よ、良かったああああああ!
その必死な様子に京華ちゃんはしょうがないなぁ、って言うみたいに笑ってカウンターの中に入るとそばに来てぽんぽん、と頭を撫でてくれた。
そしてそのまま厨房に手を洗いに行ってしまった。
付き合いの長さから言わずもがな、で全て動いてくれる。
京華ちゃんという希望の光を手に入れればもう完全無敵だもんね!
京華ちゃんは女の子なのに昔からとっても紳士な所があってそこらの男の子よりもすごーく頼りがいがある子なんだ。
聞くところによると、なんだけど、学校で王子さまって呼ばれてるんだって。
さすがよねー。
「というか、京華ちゃんはなんでココに来たの?」
どこから見つけてきたのかエプロンを身につけた京華ちゃんに簡単な作業を任せることが出来たせいかお客さんの回転も早くてだんだん余裕が出てきた。
お客さんの足がやっとのところで途切れ京華ちゃんに聞いてみた。
「散歩がてら千花の働いてるとこ見に来たんだ」
本当はケーキだけ買って帰ろうって思ったんだけどね。
と言いながら、ケーキの箱を補充する。
ちなみに京華ちゃんと私のお家はそれなりに距離が近いせいかお互い別の高校に通っていても良く一緒に会って話したりどちらかの家でご飯を食べたりするくらいの仲よしさん。
私のパティシエへの夢を1番応援してくれてるのも京華ちゃんなのだ。
「で、あの女みたいなべっぴん店長どこいったの?」
王子さまって呼ばれてる京華ちゃんに女みたいって言われる綾人さんって…。
なんで私の周りって外見性別間違えて生まれてきた人多いんだろ。
「実は今日は私が追い出しちゃったの」
「へー、ついにこの店乗っ取ったの?」
「違うわよっ!私が1人でお店回せるように修行させてくださいって頼んだだけよ」
「……ふぅん。それでてんやわんやになるとは、千花って本当に可愛いよなぁ。来た時の千花の泣きそうな顔すごかったよ?」
「もう!京華ちゃん!」
私だってまさかこんなに忙しい日になるなんて思ってもなかったわよ!
恥ずかしくて熱くなるほっぺを抑えながら怒ると京華ちゃんはクスクス笑ってまた私の頭を撫でた。
「でも、なら尚更来てみて力になれて良かった」
そうふわりと笑う。
女子高のお姫様たちがみたら、一瞬できゅーん!ってしちゃうんだろうなって感じの京華ちゃんの笑顔。安心するのと同時に同じ学校じゃなくて良かったなってつくづく思う。
…本当にいつファンの女の子から刺されるか分かったものじゃない。
だけど、
「京華ちゃん、本当に助かったよ。ありがとう」
ちょっと照れくさいけどそう告げる。
すると京華ちゃんは小さく笑ってから1歩こちらに近づいて、近い距離で視線を合わせた。
京華ちゃんは身長が高いから、自然と見上げる形になってそのまま首をかしげた。
「……どしたの?」
「……ううん。なんでもない。……じゃあ、べっぴん店長帰ってくる前に帰るよ」
「あ、じゃあちょっと待って」
言いながらケーキのショーケースの中からいちごのタルトとオペラを出して手早く包むと京華ちゃんに渡した。
「今日のお礼。私の奢りだよー」
「流石千花、わかってるね」
渡されたケーキの箱をみて京華ちゃんは笑う。
いちごのタルトは京華ちゃんのお母さんの、エスプレッソとチョコレートのケーキのオペラは京華ちゃんの大好きなケーキだ。
「何年一緒にいると思ってんの」
「だよね」
言ってから二人でまた笑った。
学校が違っても、仲良しな事には変わらない。大切な私の幼なじみだ。
もう一度お礼を言って京華ちゃんを見送ってからは、順調にお店も回せて夕方前には綾人さんが帰ってきた。
てんやわんやだった私の修行もなんとかこれで終わった。
結局京華ちゃんに助けて貰っちゃった私が成長出来たのかは謎だけれども、
綾人さんの帰ってきた時の表情と、着替えてから店頭にでて見せてくれた控えめなピースサインを見た限り志摩の試合はいい結果で終わったみたいだった。
と言うことは今日の夜は、無表情ながらもめろめろでろでろな志摩が拝めるんだろうなー。
なんて、ねっ
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