アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
Chantilly flower* 10
-
すっごいめろめろになってる。
あーもー、すっごいめろめろなっちゃってるわ。
顔はすっごい無表情なのにオーラでわかる。
大会の日の夜。
閉店後のブラインダーが全て下ろされたMa Priéreのイートインスペースに志摩と私の二人で座る。
志摩の方が壁側に座ってるからその目がずうーーーーっと綾人さんを追っかけてるのがイヤでも目に入ってしまう。
厨房では、綾人さんが試合前に約束していた志摩への特別なモンブランの準備をしていた。
「顔、にやけ過ぎじゃない?」
あくまで志摩比率でだけど。
「橘には関係ないだろう」
いやそーなんだけどさ。
志摩の事だから実際試合に勝った瞬間だって、絶対そんなに顔に出さなかっただろうに。
学校とは随分違った態度に思わずため息が出た。
「でも良かったじゃん。結局勝ち抜いて個人でも団体でも表彰されたんでしょう?」
「あぁ」
「おめでとう」
にひっと笑うと志摩は一瞬眉間にシワを寄せてから横を向く。
嫌がってるんじゃなくて照れてるってことはもうわかっている。
「綾人さんクッキーの力は偉大でしたねぇ〜?……あいた!」
小声でからかったらべしりと頭を軽く小突かれてしまった。
だけど恋バナ大好きな女子高生としては負けてらんないから身を乗り出してこっそり聞く。
「で、結局どうなの?試合見に来てくれて進展はあったの?どうなの?!」
「だからお前には関係ないだろう」
「だーれーが、大変な思いまでして綾人さん送り出したと思ってんのよ!聴く権利あるでしょーっ?」
「タチ悪いなお前」
「今に始まった事じゃないでしょ」
思いっきりハートマーク付けてやる。女子の恋バナ執着を舐めちゃダメなんだからね!
今度は志摩が思いっきりため息を吐いた。
「……あー、……なんだ。表彰式の前にこっちに来てくれて、…そこで初めて見に来てくれてたこと知って。勝ったことすごく喜んでくれて、……お礼を言って…………進展は、ない。以上だ」
始終話しづらそうに、なおかつ眉間にシワMAXで志摩は言う。
「ぇええーなにそれ。感動で抱きしめるとかなかったのー?」
「ある訳が無いだろう」
今度は逆にちょー冷静に冷めた目で見られた。
なんだ。残念。
「2人ともお待たせ」
雑談してると綾人さんが両手にお皿を持ってやってきた。
「はい、どうぞ」と志摩と私の前に1皿ずつプレートが置かれる。
「わあぁぁ!すごーい!可愛い!!」
私の目の前にはチョコレートのジェラートにチョコムースクリームをかけて周りにはブラウニーケーキがトッピングされ、ラズベリーのソースとベリーフルーツ、生クリームがあしらってあるとっても私好みのプレート。
志摩の前にはバニラのジェラートにモンブランムースクリームをたっぷりかけて和栗、ナッツ、レーズン、プラリネや生クリームがあしらってあるプレートが登場した。
通常のMa Priéreでは絶対に登場しないメニューだ。
「千花ちゃんは今日お店見ててくれてありがとう。そして志摩くんは、地区大会個人3位、団体見事に1位で都大会出場決定おめでとう!」
志摩がすごいキラキラした目で見てる。
「お祝いの日だからね、ちょっと頑張っちゃった」
ふふ、と笑う綾人さんに志摩はぐふ!と何かを抑えるように顔面を手で覆った。こら鼻血出すんじゃないわよ志摩。
「…都築さん、本当に、ありがとうございます」
だけどそこは流石武士。
志摩は綾人さんに向き直りものすごく礼儀正しく頭を下げていた。
『かたじけない』ってセリフの方が似合いそうね。
「ううん。頑張ったらご褒美上げるのは大事なこと。試合中の志摩くん、本当に頑張ってたしね」
それから、と言って綾人さんは今度は私の方を見る。
「今日、実は千花ちゃんすごく大変だったでしょ?」
「え?!」
「帰ってきた時のケーキの減り具合で分かったよ。よく1人で耐えられたね」
「ぇえー、あ、あー全然ですよ!てんやわんやになっちゃって!もう本当にまだまだ修行足らないなって感じです!」
「それでも頑張ってくれて、ありがとうね」
さ、溶けちゃう前に食べて!ってまさに女神の微笑み。良心が痛むけれど京華ちゃんが手伝ってくれた事はやっぱり黙っておこう。
「「いただきますっ」」
志摩と二人で声を合わせていう。さっそく食べたデザートプレートは本当に美味しくて一瞬にして幸せいっぱいになってしまった。
志摩もオーラで幸せ全開を物語ってた。
そんな志摩と私の間で綾人さんが楽しそうに今日の志摩の武勇伝を語っていた。ああもう綾人さん可愛い。志摩の耳真っ赤になっちゃってるじゃん!
そんなこんなで少しの幸せな時間を堪能して私たちは学生っていう身分もあって帰らなきゃ行けない時間だ。
「2人とも、気をつけて帰ってね」
志摩は見送ろうとする綾人さんに近づいていき
「美味しかったです。本当にありがとうございました」
って綾人さんの指をギュッと握った。
綾人さんはちょっと驚いてたけどふわりと笑い返してた。
優しいだけじゃなくて、柔らかい綾人さんの笑顔。
それはなんだか初めてあった時の2人より確実に距離が近づいてる感じがあって、
ああ、いーなぁって思った。
距離が近づいていく感じ。
甘酸っぱいどきどき。
私も、お店番頑張って良かったなぁ!
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 15