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廊下での騒動以来、俺は生徒会から目をつけられてしまったらしい。
敵対相手の総長に惚れる時点で、クロスの幹部も総長も終わってるんじゃないだろうか、とか考えるけど所詮は噂だ。その通りなんだけど。
白土はことある事に俺にへばりつくようになって、時々幹と喧嘩している。そして、かなりの頻度で、そんな白土の元に会長と副会長、そして双子の庶務がやってくる。
俺のことを目の敵にするそいつらにうんざりしてきたところだ。
そして、今、もうひとつの問題が生まれた。
朝、下駄箱に入れられていた一通の手紙。
曰く、『放課後、第二体育館裏』
第二体育館は、ほとんど使われれていない。そんな場所に呼び出されるとか、ほんと笑えない。
親衛隊にも目をつけられてるとか俺の高校生活終わりじゃん。まじふざけんな。
「で、なんの御用でしょうか」
まあでも、非力な俺は何にもしようがないので呼び出しにノコノコ現れるわけです。
目の前には先輩であろう小柄なチワワさんたちが二人。
死角に何人かの気配。リンチか、強姦。
俺を抱こうとするやつなんて物好きだろう。たぶん、リンチ。痛いのやだなぁ、とか思う。
まあ、最近多い小さな嫌がらせより面と向かって来てもらえる方が俺としては楽なんだが。
「最近生徒会の皆様の周りをうろちょろしてるんでしょ!」
「ちょっと顔がいいからって、それでも釣り合わないのよ!」
きゃんきゃん吠える様はどこかで見たことがあるが、でも向こうの方が内容はもっとグロッキーだった気がする。
と、関係ないことを考えてしまった。
さて、可愛らしく威嚇するこの人たちをどうしようか。
と、思案していると、聞いてるの?と怒られる。
「聞いてます聞いてます」
「もういい! 出てきて!」
その言葉と共に影にいたガタイのいい奴らがぞろぞろと出てきた。人数は6人、最近動いてなかったブランクはあるけど、まあこの人数じゃ大丈夫だろ。
「2度とあの方々に近づけないようにしてやってよ」
「ほんとーにバレねぇんだな」
「大丈夫」
離れていくチワワと交代で近づいてくるそいつらは、俺を見てニヤニヤと気持ち悪い笑みを浮かべている。
そのうちの1人が、壁を背にして立っている俺の顔の横に手をついてきた。
顔近い、気持ち悪い。
「よぉ、C組のお姫さん」
「...は? 姫?」
「あれ、知らねぇの? 間宮クン。
君、C組のお姫様って呼ばれてんの」
姫? どうして俺が?
どっちかって言うと、男ウケがいいのは夏の方だろう。
一度キレると所構わず殴り倒す怖い彼氏のおかげであいつは無事だが、間違いなく男ウケがいいのはあいつだ。
「篠田が囲ってるっつー噂から、お前が姫と呼ばれ出したらしいけどな。
ま、今はそのナイト様もいない見てーだし、俺、間宮クンにちょー興味あんの」
首元に顔を近づけてくるそいつの腹に思わずフックをいれた。ぐっ、と呻いてよろけた好きに横っ腹を蹴り飛ばす。
まじか、リンチじゃなくてそういう方面でしたか。
ちょっと鳥肌立ってる。
つーか、強姦なら先に体を拘束するもんじゃないのか、
俺そんなに喧嘩できないと思われてんの?
「てめっ!」
いっせいに動き出した他の奴らも次々とのしていく。
集団で攻撃してくるにも関わらず、弱かった。
さっきの男が、手を挙げてくすくすと笑っている。
「こーさん降参、お姫様」
「そのお姫様って言うの、辞めてもらっていいです?」
「無理。...じゃーねー、また会いましょう」
結構重い拳をみぞおちにくれてやったはずだが、足取り軽く去っていく男。チャラチャラしてるし、なんなんだ、あいつ。
さて、とため息をひとつつき、恐怖に顔を歪めているチワワさん達にゆっくりと近づく。
「な、なんだよっ...!」
「僕らまで、殴ろうってワケ...!」
真っ青な顔をしながらも強気な口調に笑みをこぼす。
あいにく、無抵抗の人間を殴るほど非道にはなっていない。
「何のしませんよ、先輩方。ひとつ、聞きたいんです」
「な、にを」
「呼び出したのは、俺だけですか?」
白土は、呼び出していませんか。
座り込む二人に顔を近づけるようにしてしゃがみこむ。
俺の渾身の営業スマイルで尋ねると、ひぃっ、と悲鳴が上がった。
ちょっと待て、俺なりの可愛い笑顔のつもりなんだ。
なんで悲鳴をあげる必要がある。そこんとこ問い詰めたいんだが。
「呼び、出したのはお前、だけ」
「そうですか、ありがとうございます」
駄目押しの営業スマイルをもう1度浮かべると、涙まで浮かべ始めた二人に俺が泣きたくなった。
ちょっと、今度鏡の前で復習してみよう。
そう決意しながら立ち上がり、体育館浦から離れようと歩き出す。
数歩歩いた所で、あ、と思い出した。
あげた声にびっくりしたのか、短い悲鳴が後からまた聞こえた。本格的に泣くぞ、なんでそんなに怖がられてんの。
何もしないって言ったじゃないか。
「もうひとつ。ここでのことは、どうぞ秘密に」
振り返った俺は、二人をじっと見つめて。
口元を人差し指で抑えて、しー、と微笑んでみた。
今度は悲鳴が上がらなかったから、次からこれでいこうと思う。
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