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何があった。
一体、何があった。
自分は、何を聞いた。
「……は、な、何言って」
高遠はまだ自分が今置かれている状況がわからなかった。いや、むしろわかりたくなかった。この現実から目を背けたかったのだ。
「好きなんです、高遠先生が……」
何を馬鹿げたことを抜かすのだろう。
高遠はすっかり混乱していた。
「あの、檜山先生。ホンマに、何言うてるんですか……?」
困ったようにへらっと笑うと、檜山はびくりと身体を揺らして顔を背けた。彼は耳まで真っ赤であった。
「オレは……高遠先生が好きなんです。ずっと、好きやったんです」
何回も言うな。なんでそんなことが言えるんだ。
高遠はふるふると身体を震わせた。それは、檜山への怒りと少しの『迷い』を抱いた自分への怒り。
「……――下さい」
「え……」
高遠は机の上に塾の鍵を叩きつけると、踵を返して玄関へ向かう。
「あんたが鍵閉めてって下さい!!」
そう言って、靴を履き塾を後にした。
なんだ、なんだ、なんだ。
なんなんだ、もう――
速足で歩く高遠の顔は、深紅の色をしていた。
「はぁ、やってもうた……」
一人取り残された檜山は、その場にうずくまり頭を抱えた。
「ホンマに……好きやのに」
ぽつりと呟いた言葉は、むなしくも静寂の中で響いてしまった。
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