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「ハァ……、カッコ悪…」
「話したって胸糞悪いだけよ。あの人は見てくれだけの男なんだから」
「店長……なにげにキツいっすね」
「あらそ?でもまぁ、今度会った時はお礼くらい言っといてもいいかもね。一応世話になったんだし」
「そうします…。でもオレがこの店に入ってから初めてじゃないっすか?オーナーが来たの」
「そうねぇ、今年初めてだわ。次に来るのは何年後かしら?」
「大体何しに来たんすか?店のこと?」
「ううん。近藤さんが呼びつけたらしいの」
酔い潰れるという失態を犯してから一週間。
オレは罰として、早番と店の開店準備という面倒な仕事に任命された。
「そういや、華さんってどこでオーナーと出会ったんすか?ホモ嫌いなのに」
「キャッチよ、キャッチ。自分のキャバにスカウトしようとしたの。あの頃から最高にイイ女だったから、私」
「へ~、だったら女と間違えたのか…。でも確かに華さんって普通に女だし頷ける」
「やだ!ミケちゃんって本当にイイ子!今度メイクしてあげる!」
「いや……オレは女装には興味無いんで…」
開店準備をしながら店長と話すのは好きだ。
この人はオレに色んなことを教えてくれたり実体験も語ってくれる。
だから例え未経験のことでも勉強になるし、何より一歩先を行く人生の先輩として興味がある。
オレはこれからどう生きていくべきか、まだ明確には何も見えていないからだ。
「ふふっ」
「え、なんすか?」
テーブルを拭いてると突然華さんがオレを見て笑を漏らした。
「だってミケちゃん。あの日からずっとオーナーの事ばっかり言ってるから…まるで恋でもしてるみたい」
「はぁ!?やめてくださいよ!オレそんなんじゃ…」
「でも毎日よ?それもこの一週間一日欠かさず。そのこと自覚してる?」
「……いえ」
あれからもう一週間経つのか。
改めて問われ考えてみれば、確かにオレはまだ見ぬオーナーに色んな思想を巡らせてる。
背は高いのか。どんな顔なんだろう。聞く限り性格は悪そうだけど本当は優しい人なんじゃ…。
そんな事ばかりが気になるオレは、確かに華さんの言う通り"恋する乙女"ってとこかもしれない。
でもオレは珍しいものが見たい、ただそれだけの好奇心。
そう、興味本位だ。だから恋なんかじゃない。
「ハァ……」
「今度は何のため息?」
「……欲求不満なんです。最近ラストまでが続いてたから。今夜は久々にバーで漁るかな~」
「あんたねぇ。いくらセーフティセックスでも不特定多数は感心できないわよ?早く1人に決めちゃいなさい、候補はいっぱいいるんだから」
「だって、どいつもこいつも今いちピンと来なくて…。もっとオレの心を鷲掴みにしてくれるような人がいいんですよ。だから今夜こそ見つけてきます!」
「ま、精々頑張って」
初恋は同じ高校の先輩。
背が高くてスポーツが得意で、目付きは悪いけど笑うと笑顔が可愛い。
そんな彼の姿を見ているだけで心臓が壊れそうな位騒いでたっけ。
そしてオレはそれを隠すのに必死でまともに話したことなんてほとんどなかった。
あの時みたいに容易くオレの感情を揺さぶってくれる様な相手を探し求めてるけど、今日まであの人を超える相手には出会っていない。
そんなヤツいないんじゃないかと半ば諦めてもいる。
取り繕った言葉はいらない。
だけど結局は寂しさに耐えきれなくなって優しい言葉を掛けてくれる男について行く。
…分かってる。これがオレの現実だ。
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