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「御崎(みさき)」
呟くほど小さな声は名を告げた。
初対面の時はさらりと拒んだのになぜ今日はあっさり答えたのか。
もしかしたら本名じゃなく適当に言った名前かもしれない。
でも、例えそうだとしても答えてくれた事がオレには嬉しかった。
「下の名前は?」
「……洋輔」
「御崎 洋輔?イイ名前。オレは──」
「ミケだろ?」
「あ、うん。……うん?あれ?オレ、名前言ったっけ?」
「無駄話はもういい。早くシャワー浴びてこい。オレはもう済ませてある」
ぶっきらぼうにそう突き放す様はまるっきり興味なさそうだけど、急かされたオレはシャワーを浴びながら考えてみた。
やっぱ名前を言った覚えはない。会話の全てを覚えてるわけじゃないけど、それでも名前を言ったかどうかくらいは分かる。
自己紹介をする時間なんてあの時はなかった。
「…ねぇ。なんでオレの名前知ってんの?」
「あ?」
シャワーを終えてベッドに上がったオレのタオルに手をかけた御崎さんは、意表を突かれた顔をした。
「だってオレ、名乗ってないもん。なんで知ってんの?前にどこかで会った?」
「二丁目で人を探すのは案外簡単だ。それがこの業界の人間なら尚更。ここは狭い世界だからな」
果たしてそうだろうか。
人探しが簡単だとしたら、この人もこの街に携わって生きてる人間なんだろう。
どんな仕事してるんだろう?
どこに住んでる?
休みの日は何してるのかな?
ふつふつと色んな質問が湧いては言葉を飲み込む。
いきなり質問攻めというのは良くない。
タイミングを見計らって少しずつ聞かないと…。
「お前、さっきの男とよく会うのか?」
「え?そうでもないかな…。今日会ったのは1ヶ月ぶりくらいだし」
「その割りには親しげだったな。付き合いは長いのか?」
「うーん、1年くらいかな…。っつうか何?なんでそんなに彼が気になるの?もしかして気に入ったとか」
「アホ。気になってんのはお前の方だ」
「…!」
全く変わらないその表情も、ただ何となくであろうオレの頭をふわりと撫でたその手も、彼に深い意味はなかっただろう。
それでもオレは騒ぎ出した心臓を落ち着かせることができず、多分赤くなってる顔を俯かせ見られないようにした。
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