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「ふぁ……、眠…」
店を開ける準備をしながら大きなアクビを1つ。
そんなオレの言動を見逃さないのはオネエの性質なんだろうか?
グラスを拭いていたオレに仕事仲間の一人がニヤつきながら声をかけてきた。
「なぁに~?ミケちゃん寝不足なの?」
「え?あ、まぁ…」
「寝る間を惜しんで夜更かしする程楽しい夜を過ごしたのね!さては彼氏でもできた?」
「そっ、そんなんじゃないっすよ!向こうが勝手に付き纏うっていうか…」
「あらいいじゃない!そのくらい愛された方が幸せなのよ?」
「だからそんなんじゃな──」
「ほらほら、もう店開けるわよ?」
華さんの一言でオレは解放され、ホッと胸を撫で下ろす。
正直あの人との関係を突っ込まれても説明が付かず、しどろもどろになるだけだ。
「あの、華さん。ありがとうございます」
「いいえ、どういたしまして。でもあの子が言った事、間違ってないわよ?」
「え?」
「私達は愛するより愛された方が幸せになれる。まぁ、それが本人にとっての幸せだとは限らないけど」
「?」
華さんは時々オレに謎かけめいた言葉をくれる。
でもそのほとんどの答えはまだ分からないまま。
いつか分かる時がくるんだろうか。
そしてその時のオレは幸せに笑ってるんだろうか。
恋愛経験がほとんどないオレには彼女の言葉はいつも深く、そして心に残る。
「ミケ~!」
「あ、松島さん。久しぶり~」
少しぼんやりしてたオレは慌てて常連客である松島さんの声に笑顔を作った。
今は仕事中だ。余計な事は考えない。考えない。
そうやってモヤモヤした気持ちをひた隠しにして頭からやっと離れた頃、松島さんのケータイが賑やかに鳴った。
「なぁママ、そろそろ閉店時間だろ?これから店の子何人か借りてっちゃ駄目かい?」
「あら、どうして?」
「実は今日さ、こいつの独身最後の夜なんだよ。だからまだ飲み歩きたいんだ。もちろん飲み代はこっちが持つし、始発までには解散するから!」
どうやら松島さんと来ていたメンバーの一人が近々結婚するらしい。
それを聞いたキャストの数人はただ酒が飲めることもあって快く申し出を受けたが、寝不足のオレは迷っていた。
できれば今夜は帰ってすぐ寝たいんだけど…。
「もちろんミケも来るよな?こうしてわざわざこの店に客を連れてきた俺の誘いだぞ?」
悪い人じゃないんだけど松島さんのこういう態度を取る所は好きになれない。
そう思ってるのは自分だけじゃないんだろうなと雰囲気で察しながらもオレは首を縦に振る。
少し癇に障る言い方だけど、無下にできないのは明らかだった。
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