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オレは今まで、どんな厄介事でもそれなりに対処して乗り切ってきた。
男子校でレイプ紛いの事をされ、初めて男を知った時も。
家族に自分の性癖を打ち明けて家を出た時も。
例え落ち込んでも数日経てばまた笑えるようになっていた。
でも今回ばかりはマジでキツい。
「長えよ。女か」
店を終えて一度別れたオレ達は再びホテルで落ち合った。
御崎さんが誘ってきたからだ。
でもどんな顔をして会ったらいいのか本当に分からず、しばらくLINEを返せずにただ見つめていた。
"この人は他人のものなんだ"って何度も自分に言い聞かせた。
だけど結局、のこのことホテルに足が向いてしまった自分が情けない。
「いいじゃん。シャワーくらいゆっくり浴びさせてよ」
この人の奥さんはどんな人なんだろう…。
旦那が他所で泊まっても待っていられるような寛大な心の持ち主なんだろうな。
そして恐らく美人。御崎さん、面食いっぽいから。
最悪の状態でも頭は割りとはっきりしてて、シャワーを浴びながら冷静にそんな事を考えていたら思いの外時間が経ってたらしい。
オレが浴室を出ると、待ちぼうけを食らった御崎さんはベッドに寝そべってケータイを弄っていた。
(奥さん…かな…)
一度知ってしまえば嫌な方向ばかりに考えが向いて勝手に気が滅入る。
こんな事、許されるはずがないんだ…。
「オレ……っやっぱ帰る!」
「はあ!?」
「ゴメン御崎さん…!」
「待て待て、落ち着けって!お前はなんでいっつもそうなんだ!」
「っ……、そうって何が?」
「それだ、その態度」
慌てて服を着だしたオレを宥めるように強い腕が抱き締める。
この人にそうされるともう身動きが取れなくなって最後にはほだされてしまう。
いけない事だって分かってるのに、離れようとすればする程離れたくないと心が反発した。
どうしようもないジレンマだ。
「ちょっと喉を鳴らして擦り寄って来たかと思えば途端に逃げ出したり素っ気ない態度を取る。お前はまるっきり猫だな」
「だって……」
「"だって"、なんだ?」
「…………」
"結婚してるんでしょ?"
その一言を言ってしまえばきっとオレ達の関係は終わる。
終わらせなきゃいけないのにどうしても言えないオレは、人として最低だ。
「──抱いて…。滅茶苦茶にしてよ…」
「……。仰せのままに」
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