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「は~い!開店前に皆に報告がありま~す」
「!?」
まるで保育園の先生であるかのように華さんら明るい声でキャスト達を集める。
それはさっきまでの彼女とは正反対の雰囲気だ。
「ちょっと急な話なんだけど、今夜でミケちゃんがお店を辞めることになりました~。とは言っても家庭の事情でしばらくお休みするだけなんだけどね」
「「……ッええぇ~!!!」」
少し沈黙を置いてから高いんだか低いんだか分からない驚愕の声が耳をつんざく。
そして色んな視線が俺に向けられた。
「本当なのミケちゃん!?」
「家庭の事情って何!?まさか親バレ!?」
「借金取りに追われてるの!?」
「……っはは…」
後半の質問なんかはもう訳が分らない。
「すみません。"家庭の事情"なんで今はまだ何とも…。また話せる時が来たら説明します」
「ハイハイ、もう店開けるわよ~。皆準備して~。ミケちゃんは裏を手伝って」
皆に詰め寄られて困っていたオレを見て、華さんはパンパンッと乾いた手打ちでその場を終わらせた。
そしてオレを上手くその場から連れ出してくれる。
「……これで良かったの?」
「はい。ありがとうございます、華さん。何から何までお世話になって」
「何言ってるの…。私はあんたに何にもしてやれてないじゃない……ほんと何にも…っ」
「ほら、もう泣かないで下さいってば…。せっかくのメイクが台無しになっちゃいますよ?」
少なくとも数日入院するはめになると病院で言われていたオレは華さん全部話した。
そして彼女はオレ以外のキャストが来る10分程前までさめざめと泣いていた。
"なぜオレなのか"…と。
「そうね…。うん。笑ってなきゃ。これが最後の別れって訳じゃないんだし…。ミケちゃん、今夜は早上がりでいいからね?ラストまでいたら皆に捕まっちゃう」
「あはは!拷問ですね、それ。全部吐くまで帰してくれなさそう」
「そうよ~?オカマは結構しつこいんだから。……だから早く戻ってきなさい。皆心配してるだろうから」
「!…はい」
何の血の繋がりもないオレを心配してくれる人がいる。
何の得にもならないのに涙を流してくれる人がいる。
だからオレは落ち込んでばかりいられない。
華さんや皆に早く元気な姿を見せなきゃ…。そしてその時は思いっきり飲んで笑って朝まで騒ごう。
「お~いミケ!お前辞めるってマジなの!?ちょっとこっち座れ!」
「あ、は~い!オレ、ちょっと行ってきます」
「うん。行ってらっしゃい。でもノンアルよ?」
「分かってますって」
店を訪れた常連さんの席に付き、そしてまた別の席に呼ばれ…。
そうこうしてる内にあっという間に時間が流れ、オレはこっそりと裏口から店を後にした。
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