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「帰る、の?」
手短かに通話を終え、オレを振り返る事すらせず服を着始めた御崎さんにたまらず言葉を投げかけた。
「ああ。元々そのつもりだった所にお前との約束を捩じ込んだんだ、文句は言うな」
「文句って…!別にそんなつもりじゃ…」
「そうか?その割りに不服そうな面してんじゃねぇか」
「っ……、そんな言い方ないだろって思っただけ」
「だったらどう言えばいい。"お前と離れたくないが、どうしても帰らなきゃならなくなった"とでも言えって?丸っきり女だな」
まただ。
彼は頻繁に"女"とオレを比べてくる。
以前は何とも思わなかったけど、そう言われる続けるにつれ、次第にオレの中で何かが積み重なりいつしかそれが苦痛になっていた。
「っ……いい加減にしろよ!いっつもそうやってオレを女と重ねて…!御崎さん…本当は認めたくないんだろ?自分が抱いたのは男だって思いたくないだけだろ!?」
"女みたい"だと言われれば"女じゃない"と頭のどこかで声がする。
それはいつしか"女なら良かったのに"という皮肉にしか聞こえなくなった。
もしオレが女なら……。
彼はオレの事をちゃんと見てくれたかもしれない。
"男だから"と一線を引かれることもなく、可能性だって見えてくる。
だがどう足掻いてもオレは男だ。
例えどんなに彼を愛したとしても所詮スタートラインにすら立てず、指を食わえて見ている他ない。
そんなきつい現実を突きつけられてるようで、彼から"女みたいだ"と言われるたびに心は萎縮し、威圧される。
だからオレは本音を隠して良い子でいなきゃならなかった。
彼にとって都合の良い従順で面白味のあるペット。
求められているのはオレじゃない、条件を満たせば誰でも良かったんだ。
現実主義なのか自虐なのか、オレにはそう思えた。
「馬鹿馬鹿しい」
「はあ…?」
「認めねえのはどっちだよ!?俺達の関係は?答えてみろ」
「っ…!」
「答えられねえよな?友達じゃなけりゃ恋人でもない。セフレと呼ぶには頻度が少なすぎる。つまり、何度か寝ただけの関係だ。そんな奴が俺のやり方に口出しするのか?」
御崎さんの言い分はもっともで何も言い返せず、オレはただ黙って俯いた。
そうして言葉を探してる間にも彼はどんどん身支度を済ませていく。
"早く何か言わないと"って焦れば焦るほど喉の奥まで出かけた言葉を飲み込んでしまい、結局何も出てこない。
(こんな終わり方って……)
喉の奥が締め付けられ歯を食い縛る。
これ以上考えるのはやめよう。
もっとシンプルに思った事をそのまま伝えよう。虚勢を張るのはもうお終いだ。
そう決めたオレは今一番言いたい事を口にした。
「──帰らないで…、お願い…っ」
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