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9 ※三人称
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ミケの部屋を訪れた日からひと月半が経とうとしている。
目まぐるしく慌ただしい日々に追われながら、御崎はそれでもしばしば彼のことを考えていた。
「…………」
何度も終わらせようと思った。
だが何かに突き動かされるように気が付けばケータイにミケの電話番号を表示している。
そして忙しさが一段落を終えた今日、ミケに電話しようか迷った末、彼は店に車を走らせた。
ケータイという顔が見えない状態で話すのは卑怯だと感じたからだ。
「あら、ふた月振り位かしら?久しぶりねオーナー」
「ああ…。色々あってな」
そこそこ賑わう店内に顔を出せば彼に気付いた華がすぐに声をかける。
だが御崎は適当に答えながら店内に視線を泳がせた。
「おい、あいつは?」
「あいつ?誰のこと?」
「…………ミケだよ」
華の棘のある笑顔にわざと惚けたのだと気付いた御崎は眉間に皺を寄せ不機嫌に答える。
自分達の関係を知ってか知らずか、どちらにせよ勿体ぶられるのは良い気がしない。
「あぁ、あの子ね。辞めたっきり連絡も無いし元気かしら?」
「!?辞めた…?この店をか?」
「店以外何を辞めんのよ?先月の話だからもうひと月以上経つわね」
華はあっさりそう答え、特に慌てふためく事もなくグラスを拭いてはカウンターに置く。
情に厚い彼女の性格を知っているだけに御崎はその様子が不可思議でたまらない。
「お前、気にならねえのか?」
「なるわよ~もちろん。でもよく考えて。この街は"来る者は拒まず。去る者は追わず"が鉄則よ?皆それぞれ複雑な事情を抱えてるし、ある日突然誰かが居なくなるなんてよくある話じゃない」
「っ、そりゃそうだが…」
「もしまた戻って来たらその時は温かく迎えてあげるわ。でもここじゃないどこかで幸せを見つけたんだとすれば、今の彼を詮索するのはナンセンスよ。そう思わない?」
どこまでも正論で納得せざるを得ない華の言葉に視線を落とし黙り込む。
頭では理解を示すが、それでも御崎は腑に落ちずケータイを取り出した。
「かけてもムダよ。彼、番号変えたみたい。それに部屋も解約したらしいから…もうこの街にはいないわ」
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