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「ッ!!…なん…で……」
一瞬誰だか分からなかった。
オレが会う時はいつもスーツ姿だったし、また会うなんて思ってもみなかったからだ。
「勝手にいなくなりやがって……」
夢だろうか?
オレはまた寝ちゃったのかな?
「…………」
「……何とか言えよ」
例え夢だとしても胸が苦しい。
苦しすぎて息が詰まる。
まるで呼吸の仕方を忘れたみたいだ。
「っ……」
「?おい、どうした。苦しいのか?ミケ──」
「──ッ!帰…れ…」
締め付けられる胸をギュッと掴んで俯くと手が伸びてくる気配を感じ、オレはその手を振り払い彼を睨みつけた。
「帰れ……、帰れよ…」
「っ、お前な…。俺がどれだけ苦労して探したと──」
「帰れッ──!!あなたの顔なんか見たくない…っ、二度とここに来るな!!」
「っ!暴れるな、落ち着けよミケ!お前に話が──」
「三宅さん、どうしました…!?ちょっと、あなた何してるんですか!?」
手当たり次第物を投げつけたオレは弾みで点滴を倒してしまい、その音に気付いた看護士が病室に駆け付けた。
そしてその視線はオレがこれ以上暴れないよう押さえつけてる彼へと向けられる。
「こいつが急に暴れて…!」
「患者さんを興奮させられては困ります!出て行って下さい!」
「おい、待てよ!俺はこいつに話があって…!」
「患者の状態よりご自分の事情の方が大事なんですか!?」
「っ……!」
看護士にそう言われはっとした御崎さんはもう一度オレに目を遣った。
彼は奥歯を噛み締め、その瞳は聞き入れてもらえない悔しさというよりはどちらかと言うと悲しそうな表情を浮かべる。
そうしてしばらく迷った後、振り切るようにしてオレから手を離し静かに病室から出て行った。
「大丈夫ですか…?」
「っ、はい。恥ずかしいとこを見せちゃって…」
「いえ……。あの、今の方は……」
「あ…えっと……、知り合いです。昔の…」
そうだ。
彼といたのはもう何ヶ月も前の話。
今は何の関係もなくて、全てが過去のことなんだ。
……だったらなぜ今更?
彼は何をしにここへ?
じわりと熱くなる目頭を布団に押し付けると雰囲気を察したのか看護士は"何かあれば呼んでください"と一言を残し、オレを一人にした。
「なんで…っ、来たんだよ…ッ…」
涙声で不満を漏らし、オレは彼に怒りを抱く。
──見られたくなかった。
彼がここへ来なければ、記憶の中だけでも病院とは無縁だったあの頃のままでいられたのに。
すっかりやせ細り弱々しくなった今の自分が彼の記憶の中に根付くのだと思うと、無性に悔しくてたまらなかった。
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