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「────っざけんな…!」
「…!」
押し殺した憤りを吐き出した御崎さんは抱きしめる腕を更に強め、少し息が苦しい。
大人な対応をしたのに彼が怒る意味が分からず、オレは大いに戸惑った。
「俺を引きずり込んどいて今更逃げんのかよ。お前を抱いた日から、例えどんなにイイ女が相手でもちっとも楽しめなくなったんだ…。責任、とってもらうぞ」
「なっ…!?誘ってきたの、そっちだろ!」
「誘わせたのはお前だ。だったらお前が悪い」
なぜかオレ達はそんな押し問答をしばらく繰り返し、子供のように言い合っては責任の擦り合いをした。
なんだこれ…?
これから縁を切ろうっていうのに、この人は前と何にも変わってない。
(あ、そっか…。変わったのは……オレなんだ)
がらりと日常が変化したのはオレだけだ。
そしていきなりその変化に合わせろと言われても確かに困るし迷惑な話だ。
だとしたら彼の言う通り、悪いのはオレなのかもしれない。
「…分かった。オレが悪い。それでいいんでしょ?あなたと言い合うのはもうウンザリだ。こんなタチの悪い遊びは今日でおしまい。明日からはちゃんと元の生活に戻りなよ」
「"遊び"だと…?お前こそ、いい加減現実を見たらどうなんだ」
「え…?」
「なんで俺がわざわざ苦労してお前を探したと思ってる?連絡が取れなくなった時点で終わらせるつもりならこんな面倒な事しねーよ」
「っ!」
"終わらせるつもりはない"
回りくどい言い方で彼ははっきりそう告げる。
(つまり、これまで通りの関係を続けるつもりなのか…)
そう彼の意志が垣間見えた時、オレが感じたのは喜びではなく不快感だった。
この人は本当にずるい。
安定した家庭に都合良く遊べる相手。
どちらも手に入れたいだなんて有り得ないのに、それをやって退ける自信があるんだろう。
こんな男に惹かれてしまった自分自身が情けなくも憐れにも思う。
「最低……。今までも散々奥さんを悲しませてきたきたんだろ…?結婚までした人なのに…なんで大切にできないの!?」
沸々と沸いてくる怒りで彼の胸を押し離し、今度はオレが彼の胸ぐらを掴み引き寄せた。
「あ?いや、だからその説明を今日──」
「説明?言い訳の間違いだろ!?どうせまた都合よくオレを丸め込みたいんだろうけどそうはいかない!あ~なんかムカついてきた!」
「勝手に解釈するな!いいから聞けよ!……離婚した」
「…………は?」
「だから離婚したんだよ。もう嫁さんはいねえ」
もう何がなんだか分からずオレはぽかんと口を開け、間抜け面を晒した。
オレみたいな人間が居ても居なくても誰かの人生に大した影響は出ないと思う。
……そう思うけど、一抹の不安が頭を過った。
「オレの……せい…?」
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