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彼は言った。
"俺ので良けりゃいくらでもやるのに…"
だからオレは言った。
"あなたのなんていらないよ。逆に具合が悪くなりそう"
そしたら"可愛くねえ"と言って、あなたは笑った。
きつめの薬に変えて意識が朦朧としたその日のやり取りは夢だったのか現実だったのかすらはっきりしない。
だけど苦痛に喘ぎ高熱に侵されている最中ふと脳裏に蘇り、本気で思った。
"死んでもいいからあなたが欲しい"、と。
そんな望みが叶うはずもない侘(わび)しさに苛まれ、それでも彼を求めてしまう自分が哀れにさえ思えたこの数日間。
本当に彼が好きなら自分から解放してやるべきだと知っていながら、様態が安定した今日、オレはまた病室のドアを開けて彼が入ってくるのを待っている。
本当に自分勝手なのは彼じゃなく、オレの方なんだろう。
「────あ」
にらめっこでもするみたいにドアをじっと見つめていると不意に隙間が出来て心臓がドキッとする。
そしてその隙間から数日振りに顔を見せた御崎さんを見てほっと胸を撫で下ろす。
何日も門前払いを食らった彼が今日も会いに来てくれる保証なんてなかったからだ。
「調子は?」
「ん……、もう平気。ごめんね」
「何謝ってんだ、アホか。体調が戻ったんならそれでいい」
オレが子供のみたいに両手を伸ばし"抱っこ"を強請ると彼は当然のようにオレを抱きしめ、触れるだけの軽いキスをする。
本当はもっと大人のキスがしたいけど、抵抗力の下がっているオレには命取りになるからと言って彼はしてくれない。
でもそれが何とも歯痒くて益々彼を求めてしまう悪循環に陥り、いつも"空腹"だ。
「……気分は?」
「え?うん、いいよ。なんで?」
「…………」
なんだろう?
いつもにも増して真剣にオレを見つめる御崎さんの眼差しに僅かな不安を感じ、何となく嫌な予感がした。
「会わせたい人がいる」
「!?……誰?」
「…………」
オレは恐る恐る聞いたけど彼は何も答えてくれず、ただオレの目をじっと覗き込む。
頭の中にいくつもの顔が浮かんでは消え、彼が答えてくれない理由を探ってる内に一つの恐れが出た。
「──嫌だ」
「ミケ…」
「絶対に嫌だ…。もう何の関係もないんだよ…!」
悩んだ挙句に性癖を打ち明け、そして拒否した人物。
最も親しく、そして一番理解されたいと願った人間。
「今後一切関わらないって決めたんだ!"向こう"にとってもそれが一番良いに決まってる!」
「それをはっきり口から聞いたのか?連絡は?」
「連絡?そんなの待ってるわけだろ!?とにかく嫌だ、絶対に…!」
"出て行ってくれ"
今でも鮮明に記憶してる。
悲しそうな目と戸惑い落胆した目を。
無理だろうと分かっていながら、それでもまだガキだったオレは受け入れて欲しいと願った。
でもやっぱり無理で……それは当然の反応だったと思う。
だからオレは決別した。
今後一切関わらない事がせめてもの恩返しのつもりで生きてきた。
「余計なことしないで…。あなたには関係ないだろ!?」
「…!"関係ない"?……ああ、関係ないな。お前がどう思おうが関係ねえ!俺はお前が生きてりゃそれでいいんだよ!テメーら親子の確執なんかどうだっていい!」
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