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猫は空に恋をする。1
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「っ……やめ、て……お願いッ…」
怒りを露にした彼がオレの恐れていた事を口にし、一気に血の気が引く。
やっぱりそうなんだ。
御崎さんはオレを両親に会わせようとしてる。
そう確信したオレは一度否定されてるだけに二度目を恐れ、悲願する唇が震えた。
「……なぁ。もしかすると、移植したところでお前は助からないかもしれない。そしたらこれが最後のチャンスだ。家族に伝えたい事はもう何にもねえのか?」
優しく包み込む声は逃げ出そうとするオレを捕まえ、諭す。
いつ死ぬのか分からない。
だったら確かに後悔はしたくない。
彼に抱きしめられ、ゆっくり背中を撫でられる内に恐怖心は自然と解けていった。
結局のところは詭弁だろう。
だけどこのまま彼の口車に乗せられるのも悪くない。
本気でそう思えた。
「…………わかった。でも側に…いてくれる…?」
「ああ」
御崎さんが側にいてくれたら何を言われても耐えられる。
彼に頼り切るみたいで申し訳ないけど、臆病なオレはそうしなければきっと取り乱すだろう。
「連絡……しなきゃね。あっちの都合もあるだろうし……第一来てくれるかどうかが疑問だけど」
「ミケ、実はな……もう来てるんだ」
「っ──!」
「悪いがこっちで勝手に連絡を取らせてもらった。時間が無いんだ、分かるだろ?」
唐突すぎて言葉を失うオレを宥め、だけど彼の声にはどこか焦りが滲み出ている。
オレの体力はそれほどまで落ちてるんだろう。
そう察したオレが何とか落ち着きを取り戻すと、彼は病室のドアから顔を覗かせ合図をした。
まず何を話そう?どんな顔をすればいい?
姿が見えるまでのほんの数秒間。
その間にオレは数年分の伝えたかった事を頭の中で整理したけど、結局口をついて出た言葉はありきたりなものだった。
「────ごめん、母さん…。オレが息子で……ごめん」
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