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「……お前、関西弁なんだな」
母さんを帰りのタクシーまで見送って病室に戻ってきた御崎さんは、開口一番にこう呟いた。
「そりゃあ奈良県で育ったからね」
「けどその割には普段出ねーよな?」
「まぁね。でも地元に戻ったら出ちゃうかも」
今すべき会話じゃない。
でもオレ達にはこれで十分だった。
直接言葉にしなくても彼の想いが伝わり、そしてオレの想いも伝わってるはず。
こんな泣き腫らした目で"ありがとう"なんて照れくさすぎてとても言えない。
「親父さん…残念だったな」
「……うん。まさか2年も前に死んでたなんて…」
わだかまりを残したまま、父さんは事故で他界してた。
そんな事実も知らずのうのうと過ごしていた自分を悔やんでも悔やみきれない。
「でもずっとお前からの連絡を待ってたんだろ?だったら今日の事、喜んでんじゃねえか?」
「……だといいけど」
家族だからといって必ずしも骨髄が適合するわけじゃない。
そして仮に適合したとして、オレが"その後"耐えられるかどうか。
まだ目の前には困難が山積みだ。
「そう言えばオレ、あなたに言ったっけ?」
「あ?礼なら聞かねえぞ。そんなもん、言われたって嬉しくも何ともない」
「だったらこれは?
あなたを愛しています。御崎さん」
「ッ……ひ、卑怯だぞ!不意打ちじゃねーか!」
誰かを想う気持ち。
そんなものは遠い世界のおとぎ話だと思ってた。
でもいつかそんな相手が現れるのを待ってた。
無駄だと思いながら屋根に登り、見上げた空に精一杯腕を伸ばす。
暗い雨雲に覆われる時も、澄み切った清々しい青空を広げる時も、いつでもオレはあなたに手を伸ばすから、躓きそうな時は少しだけ支えて?
そしたらオレはあなたの為だけに鳴き声を上げるから。
「……勇太。」
「っ!その名前で呼ばないでくれる?」
「なんでだよ。いいだろ?俺だけの特権だ」
「だーめ!」
「なんだ?顔赤いぞ…?まさか熱…!?」
「う、うるさい!これだからオジサンは!」
「お、おじさん!?……そうか。よし。お前はその"おじさん"にこれから一生可愛がられるんだ、覚悟しとけ!」
「えっ…!?それってつまり……」
この先どうなるかなんて誰にも分からない。
どんな苦しみが待ち受けてるのか、この幸せがいつまで続くのか、それは例え神様にだって想像がつかない。
だって、どんな状況であったとしても、そこにある幸せを見つけて大切にできるかは自分次第だから。
「あ?なんだよ。顔赤いぞ?」
「~~!…なんでもない」
雨の日も、例え嵐の日だって、オレはいつでも彼(太陽)を見上げて微笑んでいよう。
屋根の上でのんびりと日向ぼっこするネコみたいに。
end (・∀・)ノシ
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