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オレは彼に提案した。
"別々の道を歩もう"と。
遠回しではあったけど、綺麗事が好きな大人らしく気負いしない良い案だったと思う。
彼はきっとそれを望んでいたから。
…だけど本当は離れたくない。今更離れられない。
身も心も彼の温もりにあまりにも慣れすぎたオレには今更それを手放すことなんか考えられないけど、そう感じてたのはオレだけだったんだと思い知らされた。
あの時の苦しそうな彼の声。
あれこそが、今まで吐き出せずに我慢し続けてきた何よりの証拠だ。
もちろん驚いたし腹が立ったけど、それ以上にただ悲しかった。
だからこそ彼にとって都合の良い状況にしてあげたのに、なぜかその瞳は動揺に揺れた。
「…………意気地なし」
御崎さんが出ていったドアをじっと睨みつけ、悪態を吐く。
本当は本音を吐き出して楽になりたいはずなのに、病を患ってるオレを気遣って優しい嘘で誤魔化す彼は卑怯だ。
そんな嘘、もう見抜く事なんかできないっていうのに…。
「三宅さん。体温計りますね」
1人になった病室に看護師が訪れた。
いつもの検温の時間だ。
「……はい。平熱ですね。このまま現状維持できれば、明後日には退院できますよ。良かったですね」
「…………」
「三宅さん…?」
「…っあ、はい。ありがとうございます」
これからの事を考えると頭がボンヤリする。
途方に暮れるってこの事だろうか。
まだ1年上治療を続けなきゃいけないのにその気力が出ない。
何事もポジティブに考えなきゃいけないのに、今のオレにはネガティブ所か微かな想像すら出来なかった。
お先真っ暗。その一言に尽きる。
オレはこれからどうなるんだろう…。
どうやって生きていくんだろう…。
全く予想がつかないけど、何をするべきかは判る。
「あの…」
「はい?」
「セカンドオピニオン…まだ受けれますか?オレ、実家に戻ろうと思ってるんです」
オレは笑顔でそう言ったけど、喉の奥は引き攣り、声は震えた。
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