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どこでも大抵同じ。
場所が違えど、建物が違えど、共通しているのは、オレが嫌いな真っ白な世界だ。
「ここです」
ナースが忙しなくする音。
見舞い客が訪れ、安堵する声や穏やかな雰囲気が溢れる病室をいくつも通り過ぎ、オレは静かな病室の前に立った。
やけに緊張する。
「オレ、1人で入ります」
「…………。分かりました。では、談話室で待っています」
笹山さんは何か言いた気に少し口を開いたけど、オレの意思を尊重してくれた。
ここから先はオレと御崎さん、2人の問題だと思ったのか。
はたまた、オレの断固たる雰囲気が伝わったのか。
オレが頷くと、彼は踵を返し背を向けた。
(このドアの向こうに御崎さんが…)
彼はどんな状態だろう。
言葉は交わせるのか。だとしたらどんな言葉が聴けるだろう?
でも、もしかすると眠っているかもしれない。
オレはありとあらゆる可能性を頭に思い浮かべ、散々心構えをして、一度深呼吸をした。
そして小さくドアをノックする。
もちろん中からの返事はなかった。
でも、むしろその無言がオレを勢い付けてくれた。
出来る限り音を立てない様ゆっくりドアを開け、呼吸にさえ気を配る。
彼が眠ってるならそれでいい。起さずに部屋を去ろうと思ってた。
でもその浅はかな目論見は、現実を前に微塵と消え失せる。
「…っ」
白くシンプルなベッドの上に横たわる男の顔は、本当に御崎さんなのか分からない程の包帯に埋もれ、口元は酸素マスクで隠れている。
心拍数を知らせる電子音で辛うじて存命だということが分かるが、オレから見た彼の姿にはまるで生気を感じられない。
そう認識すると、途端に頭のてっぺんからスーっと血の気が引いていった。
「御崎…さん…」
やっと絞り出した声はあまりに掠れて小さい。
こんなんじゃ彼に届くはずもないのは分かってる。分かってるはずなのに…。
「ねぇ。…起きてよ」
今までの戸惑いが嘘のように言葉が溢れてくる。
「迎えに来てくれるんじゃなかった?あんたってさ、いつも口だけだよな。いつも人に期待させといて最後にはッ…」
何かが喉の奥を締め付け、声が引き攣る。
今にも叫び出したい衝動にかられるが、不平不満をぶつけたいんじゃない。
オレが本当に言いたいのは…。
彼に伝えたい言葉は…。
「──待ってる。あんたが迎えに来るのを待ってる。ずっと待ってるから…。だから……」
嫌だ。絶対に嫌だ。御崎さんがこの世から居なくなるなんて…。
「絶対に…迎えに来いよ…!」
怖いよ。御崎さん。オレを1人にしないで。
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