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今日は手術当日ともあって、朝から落ち着かなかった。
本当は側にいたい。だけど…。
「…大丈夫。きっと大丈夫。」
何度もそう自分に言い聞かせ、震える手で合掌する。
急く気持ちを落ち着かせようと散歩に出たオレは、歩いて10分もかからない距離に神社を見つけた。
藁にもすがる想いとはまさにこの事。
鳥居を見た途端、誘われるようにフラフラと足が向いた。
それからもうどのくらいの時間が経ったのか。
一度参拝をしては階段に腰掛け、しばらくするとまた参拝をする。その繰り返しだった。
幸い人気も無く静かなこの神社は、今のオレには打って付けの場所だ。
高かった太陽はいつの間にかビル間に陰り、空がオレンジ色に差し掛かった頃、オレはケータイが震えている事に気が付いた。
「はい。三宅です。」
「あ、もしもし。笹山です。」
少し焦り気味な笹山さんの声を聞き、オレの心臓が跳ね上がる。
「良かった~。何度か連絡したんですが繋がらなかったので、まさか倒れるんじゃないかと…」
「あ…」
服薬の時間も忘れ、ただ祈る事に囚われていたらしい。
突如現実に引き戻され、混乱した頭で慌てて返事をする。
「すみません!オレは大丈夫です。あの、もしかして手術が…?」
「はい。まだ意識を取り戻してはいませんが、手術は成功です。無事に終わりました!」
笹山さんは嬉しそうにそう声を弾ませた。
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