アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
6
-
「いらっしゃい。マティーニでいいか?」
「ん」
入って来たのは男。しかも一人だ。
「随分込んでるな」
「まぁな。お前のとこは?」
「ぼちぼちってとこか。良くも悪くもねー」
マスターと顔馴染みなのか、男はカウンターに座ると親しげにマスターと会話を交わし酒を注文した。
長い睫毛に切れ長の目。
シャープな顔立ちでかなり綺麗な男だが、上着を脱ぐと意外に胸板が厚めで引き締まってる。
もろオレのタイプだ。
「…………」
「っ!?あの…?」
「…いや、別に」
マスターと会話する隣の男を盗み見していると突然こっちに目を遣ってきてバッチリ視線が交わる。
オレが見過ぎていたのかもしれない。
でも男は文句も言うわけでもなくすぐに目を逸らした。
何か言いたげな瞳を残して…。
「…あの……」
「あ?」
「っ!いえ…」
何を言うかも決まらない内に声をかけてしまったオレは結局黙り込む。
いつもならこんな失態は冒さないのに、一体何が違う?
「何か言いたい事でもあるのか」
「……」
吐き捨てた口調で男にそう問われ、オレはますます追い詰められた気分にさせられた。
まるで突き刺すように冷たく根本を見抜くような鋭い目。
これだ。
この目がオレの調子を狂わせてるんだ。
「あなたこそ…。オレに何か言いたそうでしたよね」
「俺が?はっ、自惚れんな。テメーになんか興味ねえよ」
「…!」
全ての人間に興味を持ってもらいたいとは思わない。
でも初対面でこんな言われ方をしたのは初めてで、オレの中で怒りが生まれた。
──こいつを弄んでやろう。
その怒りがオレの遊び心に点火するのに、そう時間はかからなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
6 / 82