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性急だった彼は動きを止め、荒々しかった息遣いすら止めるみたいにじっとして動かない。
いや、動けないと言う方が正しいかも。
「お客さ~ん。聞いてます?」
「あ…いや、その…っ」
「────聴こえてんならさっさと出ていけって言ってんだ!!」
「ッ!!」
言い訳すらさせない男の怒鳴り声が耳を劈き、それで危機感がピークに達したのか松島さんは一目散に個室から飛び出して行った。
そして残されたオレはと言うと、ホッとして息を吐くのと同時に強ばっていた力が抜けてズルズルとその場にへたり込んでる。
店には申し訳なかったけど結果的に助かった。
それを実感すると体が恐怖を思い出しガタガタと震え出す。
「あ……あの…、すみませ──」
「──どうしようもないビッチだな。昨日あんなに啼かせてやったのに足りなかったか?」
「え……ッ御崎、さん!?なんでここに…!?」
謝罪を押し退け吐かれた言葉に顔を上げるとそこにはいつもより険しい表情の御崎さんいて、軽蔑の眼差しをオレに向けていた。
「なんでって、ここは俺の店だ。ついでに言うと飲食店であってホテルじゃねえ。分かるか?俺の言ってる意味が」
「オレそんなつもりじゃ…!」
「どうだか。もったいぶらせて相手をヤキモキさせて楽しんでたんじゃねえのかよ?さっきの奴の言い方じゃそんな感じだな」
「ッだから違──!」
「良い子ぶんなよ。どうせ図星だろ?俺の店じゃなきゃ放っておいたんだが、てめーらホモの簡易ホテル代わりにされちゃいい迷惑…、…!?」
「っ──」
悔しかった。ムカついた。
でもそれ以上に悲しい気持ちが喉の奥まで上がってきて、そこで反論の言葉を詰まらせてる。
確かにオレは尻軽だ。ビッチだ。
でも、したくない相手だっている。見境なく盛ってる訳じゃない。
そう思ってると目頭が熱くなり、堪えていた色んな感情が全て混ざり合い雫になってボロボロと溢れ落ちた。
「あの人はオレが来るよりずっと前から店の常連だし…、今日だって本当は来たくなかったけど…っ、あの人の機嫌を損ねたら皆に迷惑がかかるんだよっ…!」
「……みっともねえ。気持ちわりーから泣くな」
「ッうるさいなぁ!!そんなのオレが一番よく分かってるよ!でも…怖くて…っ、すげー怖くて…、オレどうしたらいいか分かんなッ──ん… っ」
泣き喚くオレはさぞかし滑稽で女々しかっただろう。
御崎さんに胸ぐらを捕まれた瞬間"殴られる…!"と咄嗟に目を瞑ったが、そんなオレに与えられたのは暴力ではなく重ねるだけの無愛想なキスだった。
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