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「取りあえず三日分…だったよな」
家に帰ったオレは昼間には出来なかった入院の準備に追われた。
着替えと必要最低限のものをカバンに詰めるが、その心境は旅行には程遠く逃亡者に近いものだった。
「……ん?あれ…!?」
すると突然、静かな部屋にマナーモードの振動音が響き、ケータイに表示された御崎さんの名前を見て胸がドキリと鳴る。
時計を確かめてもまだ約束の時間には程遠い。
(もしかして…ドタキャン?)
有り得る。
元々無理だと言っていただけに不安が頭を過るが、オレは深呼吸し平常心を心がけて電話をとった。
「もしもし…?」
「おう。もうコンビニに着いたぜ。車止める場所は?」
「えっ!は、早くない!?」
「なんだよ。俺が早く来ちゃ都合でも悪いのか?」
「そういう訳じゃないけど…。来れなくなったのかなって思ったから」
「……さっさと迎えに来い。じゃなきゃ帰るぞ」
「あ、待って!すぐ行くから!」
「急げよ」
突然降り出した雨が上がる。
その後に雲間から青空が見えた時のような晴れやかな気分に包まれ、唐突に切れたケータイを握り締めペタンッと床に座る。
「……来るんだ…。あの人が今からこの部屋に…………っヤバ!!」
入院仕度の真っ最中だったオレは慌ててカバンをクローゼットに押し込め、色々引っ張り出したものを適当に片付ける。
他人に干渉されたくないオレがこの部屋に誰かを入れるのは初めてだ。
少し緊張する…。
「お待たせ御崎さん…!」
「おせーよ、バーカ」
「……(バカ…?)。えっと…、パーキングは向こうにあるから」
「ん。お前も乗る?」
「…?オレはここで待っ──」
「乗れ」
「……はい」
不貞腐れてハンドルに凭れた御崎さんはいつもより幼く見え、何となく可愛かった。
バカと言われたところで痛くも痒くもない。
そればかりか、違う一面を垣間見せた彼に騒ぎ出す胸を必死で押さえつけた。
──もう、今夜が最後だというのに…。
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