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あっぱれ金の亡者
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絶望的な気持ちでその場に膝から崩れ落ちていると、
「うおぉぉぉぉ!」
勇ましい猛り声が頭上から降ってきた。
空を降り仰ぐと、ドゥーガルドが剣を両手で降り構えて落下してきていた。
そしてそのまま、モンスターを頭から真っ二つに切り裂いた。
その瞬間、血しぶきのようにモンスターの中心から黄色い液体が噴き上がった。
あたりに胃がムカムカするほどの甘いにおいが立ちこめた。
「ドゥーガルド!」
モンスターの飛沫が止んでから、俺はドゥーガルドのもとへ駆けつけた。
ドゥーガルドはモンスターに突き刺した剣に寄りかかりながら何とか立っているという感じだった。
「だ、大丈夫? もしかしてどこかケガしてるとか……」
「……いや、大丈夫だ。だが、体が熱くて……。毒かもしれない。あまり俺にふれない方がいい」
俺は慌ててドゥーガルドの背中をさすっていた手をどけた。
確かに、ドゥーガルドの体は粘りのある液体で濡れていた。
恐らく最後にモンスターが噴き出した液体だろう。
肩で息をするドゥーガルドの目は赤く潤んでいて苦しそうだった。
ガサガサ……ーー
ぐったりとしたモンスターの体が不意に動いた。
まだこいつ生きているのか!?
俺とドゥーガルドに緊張が走る。
ドゥーガルドはとても戦える状態じゃない。
走るのも難しいかもしれない。
ドゥーガルドを抱えて俺が走れればいいけど……。
どう考えても無理がある。
絶望的な気持ちで、唾を飲み込んでいると、
「……っ、ふざけんな! なんてことしてくれんだ! まだこいつの媚薬とってねぇよ!」
モンスターの体の下からアーロンが現れた。
……ああ、そういえばこいつもいたんだったな。
クズの安否など全く気にもとめていなかったので、奴の登場に驚くより気が抜けた。
「……ふざけてんのはどっちだよ。こっちは大変だったんだぞ」
「俺だって大変だったんだ! なかなか雌しべの媚薬が見つからないし、蔦は襲ってくるし!」
「自業自得だろ。それより、アーロンもなんか顔赤くないか?」
アーロンもドゥーガルドのように少し熱っぽい目をして、全身モンスターの液体で濡れている。
「毒かもしれないから俺に近づくなよ」
そう言ってアーロンと距離をとる。
「誰が近づくか! つーか、これは毒じゃねぇ! 媚薬だ!」
「え?」
俺は、ドゥーガルドの背中をさすった時についた手のひらの液体を見た。
媚薬というものを見たことがないからわからないが、確かにこの妙に甘い匂いといい、ドゥーガルドたちの熱っぽい目といい、毒よりも媚薬の方が納得がいく。
「クソ! もったいない! おい、荷物持ち! 鞄から空の瓶を持ってこい! 俺たちの体や服についてる媚薬しぼり集めるぞ!」
そう言って、体を濡らす媚薬をどうにかかき集めようとするアーロンに俺はもはや呆れを通り越して感心すらしていた。
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