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Side孝彰、1
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「じゃ、月曜朝9時に迎えに来ますから」
「お疲れさまでした」
仕事が終わって、孝彰は自宅のあるマンションの前まで送ってもらった。
エントランスに入り、オートロックの横を通り過ぎると、マンションには珍しく、コンシェルジュが出迎えてくれる部屋に入る。
「おかえりなさいませ、神都様」
「ただいま、内野さん」
内野さんは、このマンションが出来た当初から、ここで働いている。親がよく利用したホテルのコンシェルジュをしていた人で、定年と聞いてすぐに頼んで来てもらったと聞いている。
温厚で頼りになる人だ。
このマンションは、オートロックで入る一般棟とは別に、コンシェルジュがいるエグゼクティブタワーがある。孝彰はそこの最上階の住人だった。
ここに入居するきっかけは、二十歳になった時の親からのプレゼント。
孝彰の親は都心の一等地にたくさんの土地を持つ大地主で、マンションも何棟か持っている。道楽で会社も経営したら儲けがでちゃった。と、他人が聞いたら暴れだしそうな事をネタにしているふざけた親だ。
孝彰はそのふざけた親から産まれた3人兄弟の末っ子で22歳。
大学生だ。
一番上の姉が経営するモデル事務所に所属する、海外を中心に活動するモデルをしている。今日も午前中にニューヨークから帰ってきた。
そのまま帰宅出来ると思っていたら、人使いの荒い姉に騙されて、急遽スタジオでの仕事が入り、夜やっとの事で解放された。
「疲れた......」
部屋の鍵を開けて中へ入る。
リビングの真ん中に置かれたソファーに座るなりバタンと横になった。それは190センチの孝彰が余裕で横になれる大きさだ。
「軽くシャワー浴びて寝るか…このまま寝るか...」
目を閉じて呟く。
ずっと自分を演じていた疲れが、家に帰るとドッと溢れ出す。
「あぁ、神の杜に行くのも悪くないな......」
そう呟いて腕時計を見ると、10時半を過ぎたところだった。
あそこも温泉好きな親が道楽で始めたスーパー銭湯だ。
近くでも温泉気分を味わいたいと建てたそこは、超オススメだから一度行ってみて欲しいと言われ続け、この前パリから帰ったその足で初めて行った。
時間も早かったこともあり、家族連れが多く、とても賑やかだったけど、お湯はお勧めするだけあって、なかなか良かった。
その次に行った平日の夜中は人も少なく、静かで癒された。
(今ならゆったり入れるかな)
このマンションからも歩いて5分くらいだ。
あそこへ行くとめちゃくちゃ浮くが、海外のコレクションを転々としているので、日本で自分の事を知る人はほとんどいない。
この背格好だから、驚きと羨望の目で見られることは日常茶飯事だが、それはこの仕事をするようになって、全く気にならなくなった。
(近いけど......運転も久しぶりだし、車でいくか)
車のキーを掴んで、孝彰は見えない仮面を取っばらい、普通の神都孝彰として家を出た。
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