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Side有生、9
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「みっ...耳の近くで......話さないで...ください」
「やっと、僕の方を向いてくれた。耳は苦手?」
神都は優しく微笑みながら言う。
黙っていると怖い印象すら感じる彼が、こんな優しい顔を見せるなんて反則だ。
そうだよ。あなたの方を向いたから心臓がバクバクいってるよ。
(顔を見たって、声を聞いたって、俺は神都さんを意識しただけで......おかしくなる)
「耳が苦手って言うより......あなたの声が......」
「僕の声?」
「......変なんです...昨日名前を呼ばれてから...その声が...頭から離れてくれなくて...なんか、変な魔術にでもかかったみたいな...」
有生は心のモヤモヤを、神都に話した。
「それって......」
神都は驚いたような、戸惑ったような、不思議な表情になっている。そしてまたフッと笑うと、有生の隣に並んで座った。
「あのさ、有生」
「...なんですか」
隣に来られると、体格の差は歴然だ。
触れてはいないのに、彼のいる左側がやけに暖かい。
「僕たち、そうだな...友達にならないか」
「友達に?」
「ああ」
「いいですけど...って言うか、なりたいかも」
突然の提案に、有生は一瞬ポカーンとした。
こんなにかっこいい人に友達になろうと言われて、断る人がいたら会ってみたい。
「よし、じゃあまずは自己紹介からだ。僕は神都孝彰、22歳、モデルをやってる。主に海外のショーに出ている」
「モデル!やっぱり、当たってたんだ、あ......」
「ん?」
「あ...あの...前に、初めて神都さんを見た時、陸と...あの、弟の陸と、もの凄くかっこいいから、きっとモデルさんだ、って予想して......」
そこまで言って、あっ、と言う。
「ごめんなさいっ、神都さんの事、勝手に噂してました」
陸と、身体が凄い、アソコが凄いと散々言った事まで思い出して、申し訳ないとゆう罪悪感みたいなものが、有生を襲った。
「いいよ、正直だな」
そう言って、右手が自分に伸びてきたかと思うと、頭をポンと触ってきた。
「じゃあ、今度は有生の番だ」
「うん、僕は斉木有生、17歳で高校2年生。兄弟は弟が1人、親は海外に出張中で、俺と弟はばあちゃんのとこにいるんだ」
「有生は見た目細いけど、スポーツはやってるの?」
「部活は陸上で、専門は走り高跳び。だけど...そんなに真面目には」
「どうりで、昨日抱きかかえた時、軽いと思ったんだ。走り高跳びなら、よく飛びそうだ」
と言って笑う神都のその言葉に、昨日のつまづいた時が蘇る。
(彼の裸の胸に抱きとめられたんだ......)
だけど、「よく飛びそう」と言うのは、何とも複雑だ。
「ひどい」
「ん、自覚あるよ」
そんな他愛ない会話が楽しくて、何の気なしに見た時計が0時になりそうなのに気がついた時は焦った。
「あ、俺もう帰らないと!すみません、また...」
有生は慌てて立ち上がった。
「...有生、明日も来る?」
「明日は週末だから、弟と、もう少し早い時間に来ると思う」
「そうか、早いと人が多いからな…僕が悪目立ちする」
(確かに、初めて見た時すごく浮いてたな)
あの日の神都を思い出したら、可笑しくなった。
すれ違った小さな子まで、ガン見してたっけ。
「あ、今心の中で納得したな」
「ご...ごめんなさい...」
(...バレてる)
「いいよ、僕は10時半頃に来る。出来ればゆっくり入ってて」
やんわりとワガママを言う神都を置いて、有生はお風呂を出た。
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