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Side有生、12
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「はぁ...疲れた......凄く...」
あの後、携帯を目の前に置いて、メッセージを考えに考えて何度も読み返すのに数十分、次は送信するまでに数十分、冬だと言うのに変な汗は出てくるし、ドキドキし過ぎて手は震えるし、わずか数個の会話で、終わったらフルマラソンした後みたいにどっと疲れてしまった。
(...や、フルマラソンやったことないけど、やった人を見た時こんな感じだった)
それにしても......
『有生と陸君に会えるのが待ち遠しい』
『待ってるよ、早く会いたいな』
神都からもらったメッセージを、じっと見つめる。
(友達に送るメッセージ......か?)
少なくとも正嗣とは、こんなやり取りはした事がない。
(これが大人の付き合い方なのかな......)
ボンヤリ考えていた有生の脳裏に、いきなり神都が現れて、
『早く会いたいな』と囁いてくる。あの甘い声で。
(わっ!俺ってば何を.........っ)
びっくりして、頭を抱える有生。
その顔は真っ赤になった。
俺たちは、ばあちゃんが作ってくれた昼ごはんを食べて、12時半を過ぎたところで家を出た。
LINEで貰った地図を頼りに歩いて行く。神の杜から徒歩5分くらいだと聞いているので、それほど遠くないはずだ。
そうして着いた場所に、二人は固まった。
「......」
「......え、ここだったの?」
それは都市開発で、綺麗な公園が出来た時に、一緒に建った高級マンションだった。しかも本当に近いし、よく知っている所だった。
「...へぇー、どんな人が住んでるんだと、友達の間でも話題に出る事あるけど、神都さん住んでるんだ」
と陸は言う。
有生も、まさかこのマンションに入る日が来るとは、思ってもみなかった。
(神都さんに似合い過ぎてる......ヤバい、会ってもないのに、もうドキドキしてきた...)
「ゆうちゃん、入ろう!」
と言う陸は、ワクワクが止まらないようだ。
まるでアトラクションに入るみたいなノリの弟が心底羨ましいと思う有生。
「あ、あぁ......えっと...ドア抜けたら、人がいるところまで真っ直ぐ進むんだな」
実はこの、「人がいる所」という意味がよくわからなかった。大家さんでもいるのだろうか...と。
でも、言われたとおりに進むと、その意味は分かった。
「ようこそいらっしゃいませ、お待ちしておりました。あなた達は斉木様ですね、神都様よりお聞きしておりますよ」
スーツを来た品の良さそうな男性が、ニッコリと話しかけてきた。
「あ...の......」
「はい!お招きされました、斉木陸です。こっちは兄の斉木有生です。あの、おじさんは...?」
固まって上手く話せない有生と違って、陸は物怖じもしないでスラスラと話し掛ける。
「陸、おじさんは失礼じゃ......」
と、有生が弟を止めると、彼が笑って言う。
「いいんですよ、おじいさん、と言われなかったので、むしろ嬉しいですね。私はここで、コンシェルジュをしております、内野と言います」
「え、この奥はホテルなんですか?」
「いいえ、こちらはエグゼクティブタワーと言っていますが、マンションなんですよ、私は門番みたいなものです。神都様のお部屋はこちらです」
そう言って、エレベーターを開けてドアに手を添えながら、中のボタンを押して「どうぞ」と中へ誘導された。
「ドアが開いたところが、神都様のお宅です」
内野が軽く頭を下げるのを見ながら、ドアは閉まった。
「ちょっと、ゆうちゃん見て、このボタン、一番上が押してあるよ!一番上って高そうじゃない?神都さんて何者なの?」
「え......モデルとしか聞いてない......けど」
モデルとはそんなに儲かるのかと、いやらしい事を考えてしまった有生だった。
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