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Side有生、15
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雑誌に載っている孝彰は、あまりにカッコよすぎて、最初に見つけた時は、言葉を無くした。
ドキッとしたけど、孝彰を初めて見た時のそれとは違う。
他人を突き放すような、近寄らせないような、怖いくらいのオーラが見えるようだった。
そして、ここにいる孝彰が普通に見えるほどの、背筋がゾクッとする怖いくらいの表情。
(これがモデルの孝彰さん......)
凄いと思った。でも有生は不思議だった。
どうしてこんなに凄い孝彰を、彼は見せたくないと言ったのだろう。
恥ずかしい、と言っていたが、神の杜で身体を隠すことなく歩く彼に、羞恥心があるとは思えなかった。
(見て欲しくない、と言われた時は本当にショックだったけど、今はこうして見せて貰えるから......)
それからはどんどん違う孝彰を見つけるのが楽しくなって、有生は孝彰の呼び掛けも聞こえないくらい、没頭していたらしい。
後で彼にその事実を聞かされた時は、どこかの穴に入りたくなるほど反省した。
でもその間に、孝彰は夕食を作ってくれていた。
彼を見つける作業は思ったより時間がかかり、気がついた時は夕方の5時で、まだ祖母が作る夕飯には間に合う時間だったけれど、彼の手作りのご飯が食べられる、こんなチャンスに有生はすんなりお言葉に甘えて、家には夕食は要らない、と電話をした。
「......美味しそう」
「そう?人に料理を振る舞うの、初めてだから、味は分からないよ。食べよっか」
孝彰が作ったのは、鶏団子入の味噌鍋だった。
だしもよく効いていて、コクもあり、とても美味しい。
イメージで人を語るのは良くないけど、孝彰が純和風の鍋を作ったとゆうのも不思議な感じがしていた。
でも、これが有生の心を落ち着かせてくれたのだ。
「身体、温まりますね、あぁ美味しい…」
「よかった、いっぱい食べて」
まさか孝彰とご飯を食べる日がくるとは思ってもみなかった有生。更に彼の手作りの料理を食べられるとくれば、胸がいっぱいで、喉を通るか不安だったけれど、それは余計な心配だった。
「.........ん、あれ?」
ふとその時、部屋の端に置いてあるスーツケースに目が行った。ここに来た時には無かったはずだ。
「あのスーツケース......」
「あぁ、明日からイタリアなんだよ、有生が相手をしてくれない時に準備していた」
「......それ、意地悪。って......え...明日!?」
前日にお邪魔してしまって良かったのかと、申し訳なく思う有生。そんな思いが分かったのか、
「明日は飛行機乗るだけだから、何も心配要らないよ。海外なんて慣れてるし」
と、孝彰は笑って言ってくれて、ホッとする。
(そうか......明日から孝彰さん、いないんだ......)
「有生、今度は何を考えているのかな?」
「あ、何も...この鶏団子、美味しいです」
(あのスーツケース大きいから、きっと長いのかな......孝彰さんは仕事なんだから、寂しいなんて思っちゃだめだ)
と、自分に言い聞かせる。
「毎日メールするよ、有生もしてね」
目の前のご飯に集中しようと思った時に、孝彰から思わぬ言葉を貰った。
「え......あ、.........はい」
(やった!すごく嬉しいかも......孝彰さんは僕を喜ばせる天才だ)
冷静に返事をしたが、内心は踊りたいくらい浮かれていたのは間違いなかった。
食事が済んで、二人で片付けをしてから、ソファーでのんびり寛ぐことにする。
有生は孝彰の仕事の話が聞きたかったのに、彼の反応を見ていると、面白くないような表情になるので、切り出すのを躊躇われた。
(家で自分のモデルの記事も見ないと言っていたから、プライベートタイムは仕事の事、考えたくないのかな…)
「イタリアは何日行くんですか?」
「今回は、2週間だね」
「2週間......」
やっぱり長かった......。
自分で聞いておきながら、自らの心を抉ってしまって後悔する。
「何、寂しい?」
「......寂しい......あ、いや、違う!......や、違わないけど...あーっ、今のは無しで...っ......ぅ......」
つい心の本音を口に出してしまって、慌てた有生は弁解もめちゃくちゃ。だけどそれが途中で途切れた。
(あ...れ...?なんで孝彰さんが、こんな近く...えっ、く...くち)
口が当たってる、と驚く有生。
優しく触れた彼の唇は、一度離れて又触れてきた。
甘い空気が漂い、溶けそうになりかけた時に、ゆっくりと彼が離れる。
「......そんな可愛い声で、寂しいって言われたら、もう我慢できない。キス、もっとしたい......」
と、鼻が付くか付かないかの距離で囁かれる。全身の力が抜けそうなとてつもなくエロい声で。
(......え、キス......してるの?)
そうだ、キスだったのか、とポカンとする唇を、ちゅぅ...と、孝彰に吸われる。
彼と自分の間に、キスが存在するなんて、想像もしていなかった有生は、ただ驚くしかなかった。
(心臓のドキドキが振り切れそう)
「......あ...どう...し...」
「......有生、好きだ」
「.........っ...!」
(孝彰さん......孝彰さんが......僕を.....好き?)
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