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Side有生、26
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「...なんかお前、浮かれてるな。いいことあったか?」
そう言うのは同級生で友人の正嗣。
昼ご飯を食べて、軽い眠気を感じている有生に、彼が聞いてきた。
(......どうして僕の周りはこう、鋭い奴ばかりなんだ?)
類は友を呼ぶ、とは言うけれど、有生は全く鋭くない。
人よりも目立ちたくない、記憶に残したくない、と言うのが有生の望みであり、空気のような存在が理想なのだ。
とにかくボーッと生きてゆくのが好きなので、鋭い訳がない。
それが、孝彰に出会って、心が動き出した。
自分にも他人にも関心が無かったのが、孝彰のことを、もっと知りたいと思い、好きの気持ちが溢れ出している。
まぁ、常に有生を気にしている者からすれば、この変化はとてもわかり易い、それだけの事なのだけど…
「へへっ...ちょっとね」
と、サラッと答えておく。
掘り下げて色々と聞かれても困るからだ。
そう。今日は週末。
昨日、孝彰から電話を貰い、今日学校が終わったらすぐに彼と会う約束をしている。
どこで、何時に、と聞いたら、家に迎えに来てくれると言っていた。
「ところで、そのモデルとやらには、いつ会わせてくれるんだ?俺は待ってるんだぞ」
(...まだ諦めてないんだ)
孝彰に会わせろと言う正嗣に、嫌な予感を感じている有生は、孝彰にもOKを貰っているけれど、躊躇している。
「あ...ごめん、先週海外から帰ったばかりで、日本でも仕事が溜まっているらしくて、僕もなかなか会えてないんだ…」
これは本当の事だ。
孝彰は先週日本へ戻り、てっきりその週末に会うのだと思っていたが、それは空振りに終わってしまった。
ドッと落ち込んだけれど、それは孝彰も同じ気持ちだと分かって我慢できた。
そのかわり、神の杜では2回待ち合わせして一緒に入ったし、実は撮影も一度見に行った。
「なるほど、で?今日久しぶりに会うから浮かれているんだな」
「.........」
(そのとおりですっ)
当たっているけど言いたくない。
「...今日は早く帰るから」
返事をする代わりに、開き直って答えていた。
✤ ✤ ✤
学校が終わると、急いで家に帰った。
孝彰は仕事をしてから来ると言っていたので、それ程早くはないだろうと予測していたけれど…
「......あ」
家が視界に入ったとたん、その予測は見事に外れた。
「家の前に車......」
それは以前乗ったことがある孝彰の車だった。
(...うそ、もう来てる)
有生は慌てて、家に向かう。
玄関を開けると、祖母の笑い声が聞こえてくる。
「...ただいま、ばあちゃん!」
「あ、有生ちゃんおかえり〜」
「おかえり、有生」
「....か...神都さん、こんにちは」
狭いダイニングに背の高い孝彰がいると、更にその存在感が膨れ上がって、緊張してしまう。
「有生ちゃん、手洗いうがいしたら、急いで着替えておいで、今日は神都さんのところに、お泊まりするんだってね」
「え......」
有生はチラッと孝彰を見た。
彼も有生を見て、ニコッと微笑んでくる。
(孝彰さん、言ってくれたんだ)
「...ぁ...そう...急がなきゃ」
有生は顔を赤くしながら、洗面台に向かった。
自分の部屋に入り、鞄を机に置くと、制服を脱いだ。
そしてリュックに泊まりに必要なものを入れていく。
(服はどうするかな...Tシャツと...あとは...)
「...何かお困りですか?」
「......!」
孝彰が、後ろから抱きしめてきた。
「...孝彰さんっ」
ふわっと爽やかないい香りがする。
「服は任せて、有生は宿題あるなら、カバンに入れようか」
「はい......えっと......動けない」
できれば有生も暫くこのままでいたい。
久しぶりの孝彰を直に感じていられるこの時を、身体がもっと、と言っている。
「あぁ、ごめんごめん、久しぶりの有生だから、我慢出来なくて。早く二人きりになりたいよね」
と、孝彰は意地悪な事を言う。
「...言ってません」
時々お互いを見つめ合いながらの準備は、結構時間がかかってしまい、最後は、予約してあるお店に間に合わないからと、バタバタして家を出た。
ちょうど陸が帰ってきたのと入れ替わりだった。
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