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Side有生、27
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孝彰が予約していたのは、37階建ての高層ビルの最上階から1つ下がった階にある、無国籍料理のお店だった。
窓に向けてソファが置いてある個室に入り、腰を下ろした孝彰は、
「間に合った」
と一言、嬉しそうに言った。
何の事かと気になりはしたけれど、それよりも有生は目の前の絶景に、すっかり興奮していた。
「すごい綺麗...人があんなに小さい...車も...かわいい!」
1人で喋っている間にも孝彰は、お店のスタッフと色々とやり取りをしている。
「有生は何を飲む?」
「え、じゃあ......グレープフルーツジュースをお願いします」
と答え、また窓の外を見た。
西陽が正面にあって眩しいけれど、遠くの山に天使の階段が見えて、とても幻想的だ。
(何だか空を飛んでるみたい...)
「わっ!」
テーブルに身を乗り出して見ていた有生は、いきなり腰に手が触れてきて、びっくりして飛び上がりそうになった。あっという間に引っ張られて、後ろに体制を崩す。
倒れた先に孝彰がいて、腕の中にスッポリと収まった。
「...孝彰さんっ」
「お店に感動してくれるのは嬉しいけど...僕を忘れてない?」
「あ...」
「あーあ、僕は人間以外にも嫉妬しなきゃならないのか...」
と言いながら、わざとらしく溜め息をついてくる。
「ごめんなさい、だからこの体制は...」
お店のスタッフはもういなかったけれど、いつ入って来るかわからないこの場所で、これは恥ずかしい。
すぐに離れたくて、身体に力を入れると、孝彰の抱き締める手が更に強くなった。
「しばらくこのまま」
彼は頭の上でそう囁くと静かになった。
「.........?」
「...不思議だ...すぐにクリーンになる」
「......どうか、したんですか?」
何のことを言っているのか、よく分からない。
でも穏やかな孝彰の表情から、悪い事ではないようだ。
「有生にパワーを貰ったんだよ」
「僕のパワー?......そんなの、持ってないです」
「いいんだよ、君は僕にだけ効く凄いパワーを持っているんだから」
(孝彰さんだけに効く?なんだろ......)
「それよりほら、もうすぐ日没だ」
「......え?うわ...キレイ...」
さっきは綺麗な青い空だったのが、いつの間にか、一面赤く染まっている。
目の前の太陽がゆっくりと姿を消そうとしていた。
「あ...孝彰さん見て、太陽のとこ、飛行機が飛んでる!」
「お、いいタイミングだね」
真っ赤な太陽の中に、小さい飛行機が見える。
「ずぅっとみ見ていたい景色ですね......あ、もしかしてこれを見せるために、間に合った、ってさっき...?」
「そう、僕のとっておきの場所。これを二人で見たかった」
「孝彰さん...」
赤く染まっている孝彰の顔が、ゆっくりと近づき、唇が重なった。
その流れでべったりと寄り添っていたので、スタッフがドリンクを持って入って来た時は、一人慌ててしまった。
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