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Side有生、36
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前に一度孝彰の仕事を見に行った事がある。
その時は舞い上がって緊張も極限で、凄かったとゆう記憶だけが残った。雑誌で見るK‐AKIが孝彰なんだというのは、確かに繋がらなかった。それだけK‐AKIとしてのオーラが凄かった。
「...キャラを作ってるなんて、そんなこと出来るんだ」
「うん、だからあれは僕だけど僕じゃない」
「二重人格って訳じゃないんだよね」
「ん、なりきってる。姉であり事務所社長の文香の提案で」
孝彰の姉の文香には会った事はないが、元々モデルをしていたらしい。結婚して子供が出来てから徐々にその仕事を減らし、自らの手でトップモデルを育てる方に生き甲斐を見つけた、と彼から聞いた。
とてもさっぱりした性格の、男勝りな中身を持つ人だと言う事も。
「K‐AKIはどんな性格なの?」
「傲慢。気が強くプライドが高い、我儘で自信家、自分が一番だと思っている」
「.........ぅ...わ」
(すんごい感じ悪い人じゃない?)
有生は頭の中でK-AKIの顔を思い出した。
(...そう言われたらそんな感じに見えちゃう)
「......そんな人が人気あるなんて」
「あぁ、最悪なヤツだ。でもモデルの世界は食うか喰われるか。弱い心では潰される。現に僕も一度潰れたんだ」
彼はそう言いながら、部屋の壁に視線を向けてはいるけれど、実際はその向こうのずっと先を見ている気がした。
「...まさか」
「本当だよ、あの時は何をやっても上手く行かなくて、自信を無くし、挫折した」
(信じられない...孝彰さんが...)
「だから、今仕事が貰えるのは奇跡に近い、売れるのも嬉しい。だけど…罪悪感が無い訳じゃない、心が壊れていくようで、本当の自分に戻ったとき苦しいんだ......だから棄てる」
「そう...なんだ」
「けど、全部消す儀式は凄く時間がかかって。ワンシーンワンシーンを1つずつ棄てていくんだけど、仕事の規模にもよるから、コレクションのハシゴをした時は大変」
(孝彰さん...)
真剣な顔で自分の秘密を話してくれる彼に、不謹慎だけど嬉しいと思ってしまう有生。
(いやだ...このファン心理、自分を呪いたい)
「......有生?」
「...え......ぁ...何?」
「嬉しそうだね」
「えっ、マジ?ごっ...ごめんなさいっ!」
(なんで!? ...ぁ、顔に出てる?)
有生は咄嗟に頬を押さえた。
「なんてゆうか、嬉しくてっ!あ...孝彰さんが心に苦しさを持ってるのが、とかじゃなくて......それはとても心配なんだけれど、初めて僕に話してくれたから、って意味で!」
あたふたと思いつくまま口から出るのは言い訳。
それを見て真顔だった孝彰も笑い出した。
「...はは...分かってる、分かってるから」
手をバタつかせて必死になってる有生を、孝彰は優しく抱き締めてきた。
フワッと彼の体温を感じると、ちょっと落ち着いてくる。
「ごめんなさい、不謹慎だった」
と反省する。
話も聞いてあげられないなんて恋人失格だ。
「...謝らなくていいよ。暖かいな、有生は。...さっきの話、まだ続きがあって...ここからが本当に話したかった事なんだけど、有生にこうして触れると、その凄く時間がかかる作業が一瞬にして消えていくんだよ」
「......そうなの?」
「うん、不思議だよ。有生には人を癒す何かがある」
「......無いよ何も」
孝彰のセリフは有生には甘すぎて、小さい声で反論した。
孝彰は首を横に振り、有生の耳奥に直接囁きかけるように
「......有生が大好きだ」
と言い、抱き締める手に力を込めてきた。
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