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日常と言う名の特別な日。 1(創side)
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ずらりと並んだ小さなロッカーは、この学校という施設では下駄箱と呼ぶ。
学年やクラス、さらには出席番号で靴を入れる場所を決められて、たかが靴入れに思春期の男女はときめいたりするのだ。
下駄箱の中に手紙を入れる習慣なんて今もまだあるのだろうか。少なくともそんな回りくどいことをするくらいなら直接渡された方が嬉しい。
靴を入れるところに食べ物を入れる習慣は誰が作ったのだろうか。あれは食欲が失せるからできれば無くなって欲しいな。
まぁ、本当に好きな人からの贈り物だったらたとえ下駄箱に入れて渡されたとしても嬉しいのかもしれないけれど。
いつもは他の生徒に会わないようにワザと1限目が始まるくらいの時間にここに来る。…いや、嘘だ。本当は起きれないだけだ。
幼馴染に毎日モーニングコールをしてもらっているのだけれど、それでも二度寝、三度寝してしまうのだ。
だが、今日は起きた。極度の睡魔に勝って、今ここに立っている。これも愛の力というものだろう。
それでも眠い目をこすりながら崩した制服を隠すこともなく廊下を歩く。もう注意してくる人はこの学校にはいない。
それは楽なようで少し寂しくもあるのだけれど、人は急に変われるものでもないのだ。
すれ違う生徒は俺のことを見てギョッと驚いたような顔をする者も居て、まだそれなら良い。中にはコソコソとこちらをまるでゴミを見るかのような目で見ながら話している者も居て、そちらの方がダイレクトに傷つく。ああいう人は自分が正義だと思い込んで疑わないのだろう。同じ人間だと言うのに。
少しでも嫌なことがあるとまだ帰りたくなってきた。しかしいつの間にかもう教室にたどり着いてしまっている。2ーBと書かれた薄汚れた小さな看板は見覚えがある。
扉の前に立つと一気に緊張してきた。こんな俺が教室なんて入っても良いのだろうか。迷惑ではないのだろうか。
そんなマイナスなことを考えてしまって躊躇いが生まれるのだけれど、でもここまで来て諦めるのも勿体無い気がして、一度深呼吸をしてはその立て付けの悪い扉を開けた。
そこには、誰も居なかった。
ショートホームルーム5分前を知らせるチャイムが虚しく響く。
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