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歩いて転んでドキドキキャンプ!4(創side)
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『聖夜ッ!』
目の前から人が消えた。咄嗟に手を伸ばすも宙をかくだけ。届かなかった。
ぬかるんだ雨道、しかも舗装されているとはいえ山道だ。そんなところを走れば危険だと分かっていた。だから何度も言った、叫んだ。
だけど、届かなかったのだ。
2人分の荷物を放り投げ、聖夜の落ちて行った後を追いかける。体を傾ける必要もなく滑って行くではないか。あまり遠くまで落ちていなければ良いのだけど。
木の枝で頬を切るも気にすることなく降りて行き、やっと見つけた。木の幹の側で横たわっている聖夜。
ちょうど傾斜が緩やかになっている所だった。
『聖夜ッ!』
側に駆け寄ると分かる体の傷。傷にばい菌が入る前に手当てしないと。それにこの雨だ、風邪ひいてしまうかもしれない。
だがまさかぬかるんだ山道を登って行くわけにもいかず、取り敢えずはどこかで雨宿りをするしかないな。
『聖夜、大丈夫か?とりあえず……あれ!あそこ行くぞ!立てるか?』
岩と岩の間にできた隙間。洞窟と言うほど広い場所ではないけれど、人2人くらい余裕に入りそうだ。あそこなら雨をしのぐことはできるだろう。
手を差し出すもなかなか立ち上がることのない聖夜。苦笑を浮かべる聖夜に嫌な予感がする。
切り傷なら立ち上がれないなんてことはないだろう。となると、どこかの骨が折れている?
頭の方から順に視線を動かして行き、そして見つけた真っ赤に腫れ上がった足。折れていると言うよりは捻挫しているようだ。
荷物を放ってきて正解だったな。背を向けてしゃがむ。聖夜1人くらい背負うことはできる。
『ほら、早く乗れ!』
『え…でも…』
『いいから、早く!』
渋々首に手を回した聖夜だが、『重いよ?』と申し訳なさそうに言う割には軽い。ちゃんと食べているのだろうか。
心なしか早い足取りで岩の元へと向かうのだけれど、やはり雨は邪魔だな。
足取りを悪くし、視界を遮り、体温まで奪ってしまう。天気予報では今日も明日も降水確率ゼロだったのに、山を甘く考え過ぎていた。
岩の間に聖夜を下ろし、自分もその隣に座る。
雨はしばらくやまないだろうけど、少なくともこのまま見つからないことはないだろう。
学校のキャンプでくるような山だ、ちゃんと管理はされているだろう。
誰かが見つけてくれるまで、しばらくの我慢だ。
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