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転入しますがお気になさらず。4
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「よく来たね」
見馴れた顔を見れてホッとした。
品のあるスーツを召したダンディな彼は、僕の家と縁深い楢原家の当主である。
昔からよくうちに出入りなさっているお方で僕のことも可愛がって下さっている。
高等部からの入学を受け付けていないこの学園に僕がスムーズに転入できるのはこのお方が裏で確約して下さっていたからだ。
一応形式としての試験は受け、転入に値する結果を出しておいたが、元々試験の結果に関わらず転入を約束されていたので裏は裏である。
そのため学園内では僕と楢原さんは生徒と理事長という関係以外の何ものでもなく、プライベートで交流は無いという体で振る舞うことがルールだ。
「今日から君は秀竹学園の生徒だ。この学園は少々独特な所もあるが心優しい生徒も多い。学べることも多いだろう。君ならきっと楽しく生活できるよ。あとは、体に気をつけなさい」
「はい、ありがとうございます」
「これがルームキーだよ。このカードは身分証明やプリペイドカードとしても使えるから大切にね」
「わかりました」
「......フフ、君みたいな子は特に気をつけた方がいい。部屋で襲われでもしたら大変だからね」
「......はい」
ここの生徒達は金銭に困っていないだろうから、空き巣はそう起こらないはずだ。
まして僕は親の意向で身分を偽って過ごすことになっているため、特別狙われる理由は無いと思うのだが。
しかし楢原さんは根拠無く発言するようなお方ではない。何かあるのだろう。
僕の返事に楢原さんは子供を見るような目をして笑った。
恐らく僕が意味をわかっていないことがバレているのだろうが、わざわざ理解が足りていないことを告げることもないので黙っておく。
「では花菱君、深角君を部屋まで案内してくれ」
「はい。行きましょうか、深角君」
「はい。失礼しました」
理事長室を後にし、僕はいよいよ今日から生活をする部屋へ行く。
正直、学園生活よりも部屋での生活の方が不安が大きい。
これからの神経を使うだろう生活への憂鬱な気持ちを膨らませ、花菱さんについて寮へ続く渡り廊下へ向かった。
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