アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
転入しますがお気になさらず。8
-
職員室までは特に会話もなく黙々と歩いた。
薫先輩と違って一切視線を寄越されず、神谷さんといる時間は思ったより疲れを感じなかった。
ノックをし、失礼します、と声をかけてから扉を引く。
ふわりと珈琲の香りがした。
「色摩(しかま)先生はいらっしゃいますか?」
「俺だ」
そう返事をなさって気怠そうにいらっしゃったのは、黒シャツをボタンを数個開けて着崩された、他の教師とは明らかに異なった風貌の男性だった。
金に染められパーマをかけられたミディアムヘアも印象的だ。
「透(とおる)だな?.........はぁー、なるほどな」
頭から爪先までじろじろ見られ居心地が悪い。
にやっと笑われた気がする。
「学園内の案内は、副会長にやってもらったのか?」
「はい」
「何もされなかったか?」
「はい。親切にして下さいました!」
何も?
さっと思い返すが、先生の仰るようなことは思い当たらなかった。
薫先輩は、転入生いびりをなさるような人物には思えなかったが。
「...へぇ、そうか。まぁいい。寂しくなったら言ってくれ、相手してやるから」
「はい!」
たしかに生まれて初めて親元を離れる僕がホームシックに陥る可能性は高い。
それはどうもしようがないと思うが、人に相談に乗ってもらうことで心が楽になる人もいるのかもしれない。
しかし僕はそうなったところで人に打ち明けるつもりはなかった。
親しい人には心配をかけたくないし、そうでない人には弱味を見せたくないから。
ただ、先生のお言葉に否定的な返事をするのも失礼なので、明るく肯定しておいたのだが。
......何故笑われているのだろうか。
「ッくく、お前結構面白いな」
「あはは、どこがですかぁ?」
訳が非常に気になり自然に聞いてみるも、先生は笑われるだけで教えて下さらない。
馬鹿にされているようには感じないが、高校生としてどこか可笑しいのかと不安を煽られる。
結局僕はそのまま職員室を退出した。
神谷さんが廊下でお待ち下さっていたためもあり食い下がれなかった。
「神谷さん、待たせてごめんなさい」
「いや。んじゃ、食堂行くか」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
9 / 25