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始まり(1)浅野Side
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俺は今、同僚と付き合っている。
女では無く、男と。
学生時代、彼女が途絶える事が無かったこの俺がだ。
まさか自分が同性と付き合う事になるとは思ってもみなかった。
篠原への思いに気付くまで、好みの女の子に告白されれば、両手の数ほどの女の子と付き合って来た。
そう言うと、遊んでるようで聞こえは悪いが、俺なりのポリシーに則って誠意を持って付き合って来たつもりだ。
SEXするのも、きちんと付き合ってからするし、決して遊びで付き合っていた訳では無い。
女の子は総じて俺に対して幻想を抱いているようで、理想を押し付けられた結果、居心地の悪さとなって互いに背を向け別れが訪れる、その繰り返し。
だけど、それが本当に恋愛だったのかと問われれば、正直素直に頷けない自分がいた。
常に靄がかかった様な恋愛は、所詮恋愛ゴッコだったんだ。
ならば篠原とはどうだ?
一度篠原に俺のどこが好きか聞いてみた事がある。
そしたら篠原は
「俺の事、好きになってくれた所」
そう言った。
それを聞いた時、俺は篠原の事を好きでい続けようと思ったんだ。
自分の一方的な思いでは無く、相手が自分を好きでいてくれるだけで、幸せを感じられる…俺に足りなかったのはきっとそういう思いだったんだと気付かされた。
性別とか関係無く、本当の意味で恋愛をしたい。
俺は篠原が好きだ。
ノンケだった俺が篠原を意識し始めたのは、間違いなくあの日だった…
ー1年前ー
「あーあー…」
仕事帰りに先輩から飲みに誘われ、気付いたら23時。慌てて駅に駆け込んだが、後一歩の所で乗り遅れてしまった。
俺は、遠ざかる電車の後ろ姿を呆然と見つめた後、腕時計へと目をやった。
次が最終で…10分後か。
とぼとぼと、ベンチの方へと歩き出した時、何か言い争う様な男の声が聞こえて来た。
声のする方へと視線を泳がせると、ホームの隅のほうで、男が二人向かい合って揉めていた。
ヤバイな…ケンカか?
良く目を凝らすと、見覚えのある背格好の男がいた。
あれは、もしかして…
「篠原?」
私服だったから一瞬分からなかったが、同僚の篠原だった。
実は今日、先輩との飲みに篠原も一緒に誘われていたが、用事があるからと断わって先に帰って行った。『何だ?デートか?』なんて先輩にからかわれながら…
あの様子じゃ、違ったみたいだな。私服って事は一旦家に帰ったのか?
もう一人は知らない男で、歳は20代後半ぐらいのスポーツマン風のガタイのいい男だった。
友達か?いや、もし酔っ払いにでも絡まれてるんだとしたら、助けてやらないと…
そう思い、会話が聞こえる距離まで行こうと足を踏み出した瞬間、男が篠原の腕を引き寄せ…
「……っ⁉︎」
キスをした。
篠原と、男が。
「ウソだろ…」
目の前で起こった俄かには信じられない展開に、思わず瞬きを繰り返し、固まっていると
ーパン!!ー
篠原が、相手の男の頬を思い切り引っ叩いた。
その音に我に返り、気づかれない様に、二人から少し離れた柱の影に身を隠した。
心臓がバクバクと、音を立てる。
「…そういうの要らないから」
柱の後ろから聞こえた篠原の声は震えていた。
「悪かったって言ってるだろ」
「本当に悪いと思ってるんなら、別れるだろ」
「バレないし、大丈夫だって」
「いい加減にしろよ。お前の彼女と腹の中のガキ裏切ってまで、俺はお前と関係続ける気無いから…」
「あぁ、そうかよ。相変わらず優等生気取りか。じゃあな、お幸せに」
「っ…」
足音が聞こえて来て、男はその場から立ち去って行った。
篠原の姿は柱の後ろにある為、伺う事が出来ない。
二人の会話を聞く限り、別れ話なのは一目瞭然で、ただそれが男同士の恋愛だと言う事が受け入れ難かった。
まさか篠原がゲイだったなんて…
篠原が俺の知ってる篠原じゃないみたいだ。俺は、同僚の知られざる一面を知ってしまった事を後悔した。
篠原は暫く立ち尽くしていたが、暫くすると俺が立っている柱の方へと足音が聞こえて来た。
柱の後ろに立つ俺に気付く事は無く、その横を通り過ぎた一瞬、篠原の横顔が見えて…
篠原は泣いていた。
真っ赤な瞳から涙が零れ落ち、頬を濡らして…
俺は不覚にも、その姿に目を奪われてしまった。
ートクン…トクンー
心臓が騒がしくなり、胸が締め付けられる。
時々小さく震え、手で涙を拭いながら遠ざかって行く篠原の背中を、今すぐ支えて上げたい衝動に駆られて…
あんな最低な男より、俺の方がいい男なのに。
俺にすればいいのに。
ん?あれ?
俺は今、何を思った?
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