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始まり(3)浅野Side
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そして半年が経ち、俺は、あれ以来一度も篠原を二人だけでの飲みやプライベートな付き合いに誘っていない。
もしまた断られでもしたら、篠原が俺を嫌っているかもしれないという推理が、いよいよ現実味を帯びてしまうから…
はは…柄にもなく俺って意外と繊細君?
「痛ッ!」
考え事をしていたら、紙で指を切ってしまった。
思わず、切った指を口に咥えると…
「浅野さん、大丈夫ですか?良かったらコレ使って下さい」
近くで見ていた女子社員の田中さんが、サッと、絆創膏を差し出した。
「おー助かった。ありがとう」
これが女子力ってやつか。
「いえ」
そんなやり取りをしていると、何やら視線を感じて…
あ…
篠原と目が合った。
と、思ったらフイッと視線を逸らされた。
何だろう?最近こんな事が増えた気がする。
まるで好きな男の事が気になって見つめるのはいいが、いざ目が会ったら恥ずかしくて目を逸らす女みたいな…
そして、そんな事が何度も続くと男はもしかして自分の事を好きなんじゃないかと、気になり始めてしまう。
まぁ、大概は男の勘違いというオチなのだが。
もし篠原が、意識してやってるんだとしたら、ある意味さっきの田中さんより女子力高いぞこれ…
まあ、そうじゃ無いにしても、俺の事が嫌いなら、視界にも入れたく無いはずだよな。
自分の事を嫌ってるんじゃないかとばかり思っていた篠原に、実はそんなに嫌われていないんじゃないかと思い、少しホッとした。
いや、ホッとしている場合じゃない。
篠原の視線が気になり始めてからというもの、またあの一件を鮮明に記憶から引っ張り出して考えてしまう事が増えてしまった。
あれから、篠原はちゃんと吹っ切れて新しい彼氏は出来たんだろうか?また悪い男に引っかかってるんじゃないか?何て、考える度に、俺には関係の無い事だと言い聞かせ、記憶から抹消する事の難しさにため息をついた…
常に胸の中に何かが引っかかっている様な気がしながら、過ごしていた。
あれから二人ぐらい、付き合う寸前まで行った女の子もいたけれど、また靄のかかった様なお決まりの恋愛ゴッコで終わってしまう事が目に見えてしまい、恋人には発展しなかった。
きっと引っかかっている物が俺の恋愛を邪魔しているのだ。
喉に刺さった小骨の様に、俺の胸の中で今もなお、引っかかって出て来ない物…
「……」
俺は、無意識に篠原を見ていた。
そして、気付いた。
いつの間にか目の合う順番が、逆転していた事に。
篠原が俺を見つめているんじゃない。
俺が篠原を見つめているんだ。
嘘だろ…
まさか、そんな筈はない。
篠原に対して抱くこの感情はきっと、認めてはいけない感情だ…
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